旅先ではまず走ってその土地を体で知る
5月の朝。私は皇居・桜田門の時計台にいます。周囲にはゼッケンを付けた参加者たちが集まり、和やかな雰囲気の中でスタートを待っています。朝に走るのは週2回ほどの習慣ですが、今日はいつもと少し趣が違います。会社の仲間たちと、チャリティランに臨むのです。タイムを競うレースではありません。
普段は、自宅にほど近い赤坂御所や国立競技場の周りを走っています。3人の子どもがいて、末の子はまだ生後10カ月です。自由にできる時間は限られていて、以前ほどの距離は走れなくなりました。それでも、週末の朝にはできるだけ足を運びます。走っていると、頭の中を整理できます。また、食べることが好きなので、走った分だけお気に入りの料理を気兼ねなく味わえます。
旅先でも、時間があれば走ります。初めての土地を深く知るには、自分の足で巡るのがいちばんだからです。街の空気や人々の暮らしも、より身近に感じられます。ニューヨーク、サンフランシスコ、パリ、サンパウロ……。忘れがたいのは、妻の家族が暮らすメキシコのトルーカです。標高がおよそ2600メートルで空気が薄く、いつもの調子で走ろうとすると足がずっしりと重くなりました。景色だけではない、体で感じたその土地ならではの記憶です。
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(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)



