旅先ではまず走ってその土地を体で知る
5月の朝。私は皇居・桜田門の時計台にいます。周囲にはゼッケンを付けた参加者たちが集まり、和やかな雰囲気の中でスタートを待っています。朝に走るのは週2回ほどの習慣ですが、今日はいつもと少し趣が違います。会社の仲間たちと、チャリティランに臨むのです。タイムを競うレースではありません。
普段は、自宅にほど近い赤坂御所や国立競技場の周りを走っています。3人の子どもがいて、末の子はまだ生後10カ月です。自由にできる時間は限られていて、以前ほどの距離は走れなくなりました。それでも、週末の朝にはできるだけ足を運びます。走っていると、頭の中を整理できます。また、食べることが好きなので、走った分だけお気に入りの料理を気兼ねなく味わえます。
旅先でも、時間があれば走ります。初めての土地を深く知るには、自分の足で巡るのがいちばんだからです。街の空気や人々の暮らしも、より身近に感じられます。ニューヨーク、サンフランシスコ、パリ、サンパウロ……。忘れがたいのは、妻の家族が暮らすメキシコのトルーカです。標高がおよそ2600メートルで空気が薄く、いつもの調子で走ろうとすると足がずっしりと重くなりました。景色だけではない、体で感じたその土地ならではの記憶です。
竹橋駅から東京国立近代美術館を通り千鳥ヶ淵へ。だんだんとペースが乗ってきました。このチャリティランはシャイン・オン・キッズによるホスピタル・ファシリティドッグの活動を支援するために行われています。ホスピタル・ファシリティドッグとは、医療チームの一員として病院に常勤する犬のことです。ハンドラー(※)とともに難病と闘う子どもたちに寄り添い、治療や入院生活を支えています。
※ホスピタル・ファシリティドッグとペアを組んで仕事にあたる医療従事者(主に看護師)
今日は、神奈川県立こども医療センターで活動するラブラドール・レトリバーの「オリ」も参加してくれました。走り終えた参加者のそばに歩み寄り、撫でられると静かに尻尾を振る。その穏やかな姿に、自然と笑顔が広がります。病院で子どもたちと過ごすときも、きっとこうなのでしょう。
事業の成長と社会への貢献は、両立すべきものだと考えています。誰かのそばに寄り添い、支える――。その営みは、保険という仕事の原点にほかなりません。今回のチャリティランでその思いをより一層強めました。
高い目標と人への敬意を同時に実現する組織に
フランスで経済や行政を学び、金融監督当局で働いていた私が16年前にこの業界に飛び込んだのは、保険の社会的な意義に心を動かされたからです。保険会社は人生に待ち受けるさまざまなリスクから、人々の暮らしを守っています。長寿化に伴う備えや健康への不安、気候変動まで。社会課題が複雑になるほど、保険が担う役割は重要性を増していきます。華やかではなくとも、日々の安心を見えないところで支える仕事に、私は誇りを持っています。
日本で歩んできた私たちの歴史は、もうすぐ100年です。長く支えてくださったお客さまや社会への感謝を、忘れたことはありません。私に託された役割は、次の100年へと続く土台を築くことです。受け継いできたものを、まだ見ぬ未来へとつなぐ。過去への敬意と未来への責任。その両方を胸に、日々の務めに向き合っています。
私が大切にしているのは、高い目標に挑戦し続けることと、人を大切にすることの両立です。より良いサービスを目指し、現状に満足しない。一方で、社員一人ひとりが尊重され、安心して働ける環境でなければなりません。仕事への意欲を感じられること、自分が組織に貢献していると実感できること、そして安心して意見を言えること。どれも欠かせません。2つを同時に実現するのは簡単ではありませんが、両立できる組織をつくることが私の目標です。
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