好きなお酒を片手にブランチづくり

私は単身赴任で大阪に一人住まいです。もともと料理が好きなのと、仕事柄出張が多く外食に偏りがちなこともあり、家で過ごせる日はなるべく自炊をしています。

休日は10時頃からブランチをつくり始めます。今日は「ガレット」です。そば粉を水で溶いて鉄鍋に広げ、じゃがいも、ベーコン、しめじを載せて卵を落とします。食欲をそそる豊かな匂いが立ちこめてきました。料理をしながらお酒を飲むのが私のスタイル。今日はカリフォルニアの赤ワインをお供に選びました。グラスに目をやると、思わず笑みがこぼれます。

昨年の夏、大雪山連峰を見渡す高原に佇むオーベルジュ(泊まれるレストラン)を訪ねました。季節の料理とワインが素晴らしく、雪景色の冬に再び足を運んだのです。その宿の朝食に出てきたガレットが、衝撃的な美味しさでした。以来、あの味に少しでも近づけないかと、何度か挑戦しています。前回は水が足りなかったようで、端を折り込もうとしたら崩れてしまいました。

料理の楽しさを覚えたのは、大学時代に一人暮らしを始めた頃です。ごはんの炊き方、魚の釣り方やさばき方を追求し、凝り性が高じて、陶芸も学ぶようになりました。当時つくった皿や碗は今も大事に使っていますし、頻繁にはできませんが、器づくりや酒器集めは大人の趣味になりました。

背後のキャビネットには、皿や酒器を収めてあります。料理をしながらそこに並ぶ器を眺めて「今日はどれに盛り付けようか」と迷う時間も、私にとっては小さな楽しみです。この収納の底板はホーロー製で、陶器を置いても傷がつきにくくなっています。仕切りはマグネットで固定でき、器の大きさや形に合わせて自由に区切れます。発売前の試作品を、私が実際に使いながら改善点を洗い出すこともあります。

目下の課題は、ワイングラスの収納です。現在は吊り戸棚にしまってあるのですが、奥のものが取り出しにくい。レストランで見る逆さに吊るすホルダーは、コンロまわりで使うと油煙や埃の付着も気になります。また、薄手のグラスほど赤ワインの風味を楽しめると思うのですが、半面、少しの接触で割れてしまいます。いま使っているグラスも3代目で、なんとかいい方法はないものかと思案しています。

新築着工件数減少の中でも売上高・各利益は過去最高

こうした思いは、私だけのものではないでしょう。お客様はそれぞれにキッチンへのこだわりをお持ちで、日々使いながら「ここをこうしたい」というアイデアを温めておられます。そうした要望をぶつけていただけるメーカーでありたいですし、私たちのものづくりはそこから始まります。

少子高齢化や資材の高騰などで新築の着工が伸び悩む中でも、キッチンが不要になるわけではありません。新築だけでなく、リフォームや住まいの手直しで「いまの暮らしをもっと心地よくしたい」と考える人は確実にいます。ですから私は、新築市場の縮小をそのまま悲観材料とは捉えていません。一人ひとりのこだわりに合わせた工夫で価値を積み上げられる余地があります。

事実、2026年3月期は売上高・各利益ともに過去最高を記録しました。当社の強みは、独自素材「高品位ホーロー」です。この技術を軸に、システムキッチンでは業界トップのシェアを獲得してきました。一方、リフォーム市場でのシェアは15〜16%にとどまっており、ここを早期に倍へと引き上げることが、いま最も注力している課題です。浴室や洗面化粧台でも伸びしろは十分にありますし、この技術を海外に届けていくのも成長戦略の柱です。グローバル市場での認知度はまだ高くありませんが、素材の価値は必ず伝わると信じています。

私個人としては、「究極のキッチン」をつくる目標もあります。どんな配置で最適な導線を組むか、収納の形式など、まだ構想を練っている段階です。そのキッチンで腕を振るい、自分で焼いた器に盛り付けて、妻に振る舞う日を心待ちにしています。

(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)

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