ふらりと立ち寄る日本橋ひいきの一軒
会社からも自宅からも近い日本橋の京懐石料理店。会合や接待でたびたび足を運びます。以前この場所には、当社の社員にもなじみ深い「てんぷら なる瀬」がありました。店主がご高齢で店を閉じたときは寂しく思いましたが、その後にできたのが、この「日本橋笈川」。季節の料理と美味しい日本酒、店主の細やかな気遣いに惹かれ、今ではすっかりひいきの一軒になりました。
春の陽気に誘われ、今日は日本橋をぶらぶら歩いていました。夕方には妻と待ち合わせて食事をする予定です。桜がほころぶ街並みを歩くうちに小腹が空き、ふらりと立ち寄りました。カウンターには桜の枝が活けられ、器にも桜の絵があしらわれています。店主が「今日はお花見ですから」と勧めてくれたのは、福井の銘酒「黒龍」でした。こうして季節に合わせて酒を選んでくれるのもうれしいところです。
ふと壁に目をやると、漫画家・原泰久先生の色紙が飾られています。私は学生時代から読書が好きで、歴史書や哲学書もよく読んできました。漫画も例外ではなく、少女漫画を愛読していた時期があるほどです。なかでも『キングダム』には格別の思い入れがあります。中国史のなかで、私がとりわけ惹かれてきたのが秦の時代です。学生時代には関連する歴史書を夢中で読みました。その時代を漫画にした『キングダム』。読み始めると、期待をはるかに超える作品でした。連載開始以来、欠かさず読んでいます。その作者である原先生まで、この店に来られていたとは、不思議なご縁を感じます。
振り返れば、私が太陽生命に入社したのもまた、人との縁でした。哲学科の学生だった私は「就職するのは敗北だ」などと考え、大学院に進むつもりでいました。ところが4年生のとき、酒好きだった父が急逝しました。母に苦労をかけてまで学問を続けるべきだろうか、優秀な同級生を見ながらそこまでの才能があるのかと思い悩み、かなり遅れて就職活動を始めました。
もっとも、学生時代は哲学にのめり込み、卒業論文ではカントの実践理性を扱っていたような人間です。面接でも世間話のような受け答えは苦手で、きっとどこでも少しずれた話をしていたのでしょう。そんななか、太陽生命の専務だけは「君の言っていることはよくわからないが、君が打ち込んできたことはわかった」と、最後まで話を聞いてくれたのです。
就職先を報告すると、母は喜びながらも「そんな会社、聞いたことないが大丈夫か」と言いました。ところが、父が亡くなったときに受け取った生命保険の証書を見ると、そこにはしっかり太陽生命の名前があったのです。営業職員の方が親身になって何度も足を運び、手続きを進めてくれ、母がとても感謝していたのを覚えています。お客様と向き合い、信頼関係を築きながら寄り添う。太陽生命には、当時からそうした姿勢が息づいていたのだと思います。
一軒一軒訪れて暮らしの変化をつかむ
今も当社では、営業職員がお客様のご家庭を一軒一軒訪ね、ご事情をうかがいながら保険をご提案しています。AIの時代になれば、その方に合った保障を示す精度は、さらに高まっていくでしょう。それでも最後にお客様の心を動かし「入っておこう」と決断していただけるかどうかは、人の説得力だと思います。毎月の収入から決して軽くないお金をお預かりする商品です。最後は信頼がものを言います。
ご家庭を訪ねていると、日本の暮らしの変化がよく見えます。認知症保険は、現場から「困っている方が多い」という声が上がったことを受けて生まれました。申し込み手続きのペーパーレス化も同じです。書類の不備があるたびに営業職員がお客様のもとへ出向き、書き直していただく。その負担を減らしたいという思いから、業界に先駆けて形にしました。
私が社長として力を入れたいのは、シニア層の暮らしの変化をいち早くつかみ、お客様の元気や長生きを支えられる商品やサービスを増やしていくことです。そのためには、営業の現場がつかんだ手応えや課題を、本社がすばやく受け取り、形に変えていかなければなりません。営業の現場も本社も支社も、役割は違っても向かう先は一つです。力を合わせて変化に応え、次の成長につなげていく。それが、このご縁をいただいた私の役割だと思っています。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年5月1日号)の一部を再編集したものです。
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