※本稿は、高橋基治『「教科書ぽくてちょっと変」を「ネイティヴみたいでなんかいい」に変える 教科書英語アップデートBOOK』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
文法は正しいのに、相手の表情が変わる
毎年、留学などの海外経験をして戻ってきた学生たちから、似たような戸惑いの声を耳にします。
現地で週末のドライブに誘われたある日本人留学生が、行くかどうか迷う気持ちもあって「I don't care.」と答えた。「どちらでもかまいません」のつもりだったが、その後二度と誘われることはなかったという。実は「I don't care.」という表現は、言い方によっては「興味がない」「どうでもいい」という、相手を遠ざける響きを持ちます。本人は謙虚に譲ったつもりでも、受け取る側には「この人は自分と出かけたくないのだな」と伝わってしまう。
別の学生は、指導教官の研究室を訪ねて「I wanna ask you something.」と切り出したところ、相手の表情が変わったと話してくれました。「お聞きしたいことがあるのですが」のつもりだったのですが、実際は「あなたにちょっと聞きたいことがある」と、何かぶっきらぼうのような響きになっていたのかもしれません。
私は長く大学で英語教育に携わってきましたが、こうした話を聞くたびに思うのは、文法や語彙といった「正しい学校英語」だけでは届かない領域がある、ということです。相手にどう響くか――いわば「もうひとつの英語力」を、私たちはあまり教わってこなかったのだと思います。
日本語であれば、相手や場面に応じた言葉づかいを、ほとんど意識せずに選んでいます。ところが英語になると、その感覚がうまく働かなくなる。教科書で覚えた表現を、相手や場面を問わずそのまま使ってしまう――多くの学習者が一度は通る道です。
ここでは英語圏のネイティヴ・スピーカーへの聞き取りをもとに、日常会話でとくに“損をしやすい”表現を挙げていきます。

