「つながり疲れ」が蔓延している
われわれ現代人は、起きている時間のほぼすべてをデジタルデバイスとともに過ごしている。
朝、目が覚めた瞬間にスマートフォンの画面をタップしてニュースアプリの通知を確認し、通勤電車の中ではSNSのタイムラインを無意識にスワイプし続ける。オフィスに到着すればパソコン上で絶え間なく送られてくるチャットツールや電子メールの処理に忙殺され、夜になれば動画配信サービスを眺めながら眠りにつく。
これは決して一部の極端なテクノロジー依存症の人々に限った話ではなく、ごく一般的なビジネスパーソンのありふれた日常風景である。
「今度の週末や長期休暇こそは仕事のプレッシャーを完全に忘れて、ゆっくりとデジタルデトックスをしよう」
そう固く決意して、自然豊かな温泉宿や海外のビーチリゾートへ足を運んだ経験を持つ人は多いだろう。しかし、その決意が旅行の最終日まで完璧に守られることは極めて稀である。美しい夕日や豪華なディナーを前にすれば、無意識にカメラアプリを起動してSNSに投稿したくなり、ほんの数時間がたつと「会社から重要な連絡が来ていないか」「プロジェクトのチャットでトラブルが起きていないか」と得体の知れない不安に駆られる。
シリコンバレーの巨大テクノロジー企業は、人間の脳が持つドーパミン分泌のメカニズムを徹底的に研究し、われわれの注意力を1秒でも長く画面に釘付けにするための巧妙なアルゴリズムを構築している。個人の意志の力や精神論だけで、この強固な「デジタル空間の引力」から逃れることは、現代社会においてほぼ不可能に近いと言わざるを得ない。
地球上のどこにいても世界中とシームレスにつながることができるという圧倒的な利便性は、一方で「いつでも連絡がつく状態」を強制される見えない鎖でもある。休日のリゾート地であっても、ポケットの中にスマートフォンがあり、そこに電波が届いている限り、真の意味での心からの休息は訪れない。絶え間ない情報過多による脳疲労は蓄積し続け、ビジネスパーソンにとって最も重要な集中力や深い思考力は徐々に削られていく。これが、利便性と引き換えにわれわれが陥っている「つながり疲れ」の深刻な実態である。
こうした状況は、莫大な富を動かす世界のトップエリートにとっても例外ではない。本稿では、一風変わった彼らの“休暇の過ごし方”を紹介する。
「高級ホテルのスイート」には興味ナシ
一般的に「富裕層のバカンス」と聞けば、最高級ホテルのスイートルームや、見晴らしの良いペントハウスを貸し切り、プライベートプールで冷えた高級シャンパンを傾けるような、絢爛豪華な光景を思い浮かべるかもしれない。
確かに、そうしたわかりやすい贅沢を好む層は依然として存在する。代々受け継がれた資産を持つオールドリッチは、格式高い会員制リゾートや一等地の別荘といった「所有」や「権威」によって自らの確固たるステータスを確認してきた。
また、ビジネスの成功や投資で突如として莫大な資産を手にしたニューリッチの多くは、数千万円の高級車や希少なブランド時計、そして1泊数十万円のスイートルームでの滞在をSNSの画像として見せびらかすことによって「承認欲求」を満たそうとする傾向がある。
しかし、グローバルビジネスの最前線で苛烈な競争を勝ち抜き、世界のトレンドを牽引する真の富裕層、いわゆる「シン富裕層」たちの価値観は、近年劇的なパラダイムシフトを起こしている。
彼らにとって、大理石が敷き詰められたロビー、過剰なまでにうやうやしい接客、豪華な調度品といった物質的な豊かさは、もはや「お金さえ払えば誰でも手に入るありふれたもの」であり、わざわざ他人に誇示する価値のないものへと格下げされているのだ。


