※本稿は、杉田浩章『なぜ僕は変われたのか』(講談社)の一部を再編集したものです。
いい仕事と悪い仕事を分ける「差」
コンサルタントに求められる力は、結局のところ大部分は「正しい問いを立てる」という一点に集約されます。
仮説も、分析も、資料作成も、それ自体が価値を生み出すわけではありません。すべては、「どんな問いに答えようとしているのか」が定まって、はじめて意味を持つ。問いがズレていれば、どれだけ高度なスキルを総動員しても、仕事は空回りします。
さらに厄介なのは、道具の精度が高いほど、ズレに気づきにくくなります。
ロジックで押し切れば、その場は収まります。仮説で畳みかければ、会議は進んだように見えます。強いスタンスで言い切れば、空気は締まります。
いい仕事か、悪い仕事か。
その差は、分析の鋭さや資料の完成度だけでは決まりません。問いをどこに置き、その問いを最後まで突き詰めたか。その一点です。
時々、本当に向き合うべき論点が置き去りになることがあります。問いが違っていれば、それは空回りしているだけなのです。
その「分かれ目」が生まれる瞬間を、一つのプロジェクトの事例を通して見ていきます。論理やスキルをどれだけ駆使したかではなく、問いがどこで立ち上がり、どこで引き受けられ、どう結論が導かれていったのか。
コンサルの現場から掘り下げていきます。
「答え」がすぐ出せそうな案件だったが…
2000年代に入る前のことです。某金融会社の消費者金融事業をめぐるプロジェクトに、私は参加しました。お題は一見すると、とてもシンプルです。
「消費者金融事業に参入すべきかどうか」
当時、大手消費者金融4社を中心に形成された市場は急成長していました。数字だけを見れば、魅力的に映ります。高い利回り、成長している大きな市場、いまアプローチできていない収益源。
仮説ドリブンで考えれば、答えはすぐ出せそうな案件でした。
当時の私の仕事の進め方は、「まず仮説を立て、短期間で検証し、答えを出す」というスタイル。プロジェクトの始まる日=「Day1」の段階で、ある程度の品質の高い仮説を持ち、あとはファクトを集めて肉付けしていく。
そのやり方に、疑問を持っていませんでした。
だからこの案件でも、私たちは迷いなく仮説作りから入りました。市場規模、成長率に収益性、そして競合の体力を見ても、参入は十分に合理的に思えました。あとはどう参入すれば勝てるのかについて、答えを出すだけです。
実際私は、いくつかの前提条件を置きながら、市場規模や収益性、成長性を整理していきました。王道のセグメンテーションや3C分析などのフレームワークを用いて競争環境や構造を捉え、「なぜこの市場が魅力的なのか」を説明できる状態まで落とし込んでいったのです。
それなのに、クライアントとの議論が、どうにもこうにも噛み合わない。

