仕事のデキる人とそうでない人はどこが違うのか。ボストン・コンサルティング・グループ元日本代表で、早稲田大学ビジネススクール教授の杉田浩章さんは「分析の鋭さや資料の完成度だけでは決まらない。その“分かれ目”が生まれる瞬間を、私が経験したプロジェクトの事例を通して見ていこう」という――。(第1回)

※本稿は、杉田浩章『なぜ僕は変われたのか』(講談社)の一部を再編集したものです。

窓際に立って景色を眺めるビジネスマン
写真=iStock.com/imtmphoto
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いい仕事と悪い仕事を分ける「差」

コンサルタントに求められる力は、結局のところ大部分は「正しい問いを立てる」という一点に集約されます。

仮説も、分析も、資料作成も、それ自体が価値を生み出すわけではありません。すべては、「どんな問いに答えようとしているのか」が定まって、はじめて意味を持つ。問いがズレていれば、どれだけ高度なスキルを総動員しても、仕事は空回りします。

さらに厄介なのは、道具の精度が高いほど、ズレに気づきにくくなります。

ロジックで押し切れば、その場は収まります。仮説で畳みかければ、会議は進んだように見えます。強いスタンスで言い切れば、空気は締まります。

いい仕事か、悪い仕事か。

その差は、分析の鋭さや資料の完成度だけでは決まりません。問いをどこに置き、その問いを最後まで突き詰めたか。その一点です。

時々、本当に向き合うべき論点が置き去りになることがあります。問いが違っていれば、それは空回りしているだけなのです。

その「分かれ目」が生まれる瞬間を、一つのプロジェクトの事例を通して見ていきます。論理やスキルをどれだけ駆使したかではなく、問いがどこで立ち上がり、どこで引き受けられ、どう結論が導かれていったのか。

コンサルの現場から掘り下げていきます。

「答え」がすぐ出せそうな案件だったが…

2000年代に入る前のことです。某金融会社の消費者金融事業をめぐるプロジェクトに、私は参加しました。お題は一見すると、とてもシンプルです。

「消費者金融事業に参入すべきかどうか」

当時、大手消費者金融4社を中心に形成された市場は急成長していました。数字だけを見れば、魅力的に映ります。高い利回り、成長している大きな市場、いまアプローチできていない収益源。

仮説ドリブンで考えれば、答えはすぐ出せそうな案件でした。

当時の私の仕事の進め方は、「まず仮説を立て、短期間で検証し、答えを出す」というスタイル。プロジェクトの始まる日=「Day1」の段階で、ある程度の品質の高い仮説を持ち、あとはファクトを集めて肉付けしていく。

そのやり方に、疑問を持っていませんでした。

だからこの案件でも、私たちは迷いなく仮説作りから入りました。市場規模、成長率に収益性、そして競合の体力を見ても、参入は十分に合理的に思えました。あとはどう参入すれば勝てるのかについて、答えを出すだけです。

実際私は、いくつかの前提条件を置きながら、市場規模や収益性、成長性を整理していきました。王道のセグメンテーションや3C分析などのフレームワークを用いて競争環境や構造を捉え、「なぜこの市場が魅力的なのか」を説明できる状態まで落とし込んでいったのです。

それなのに、クライアントとの議論が、どうにもこうにも噛み合わない。