※本稿は、杉田浩章『なぜ僕は変われたのか』(講談社)の一部を再編集したものです。
長引く会議の「落とし穴」
会議が長引く。議論は深まっているのに、なかなか結論にはたどり着かない。すると、痺れを切らして、誰かがこう言い出します。
「じゃあそろそろ、決めますか」
この一言で、空気は一気に安定します。会議は終わり、資料はまとまり、次の会議の予定が決まる。仕事は、前に進んだように見えます。
私たちは、答えが見えない状態が苦手です。何が正しいのかわからない時間が長引くほど、不安は大きくなっていきます。だから私たちは、「一度ここで区切りをつけたい」と、それっぽい答えを出して、前に進んでいる感覚がほしくなるのです。
早く結論を出したり、その場をひとまずまとめたりすること。そうした力は、仕事を効率よく進めるうえでは重要です。
ですが、本当に変化が必要なテーマほど、そんなに早く答えは出ません。
そのときに置かれた結論は、本当に正しいのでしょうか?
コンサルタントの仕事は、プロジェクト単位で進みます。期間は数カ月。はじめにゴールを設定し、そこに向けてスピード感をもって推進する。
一見すると、とても計画的で、合理的な仕事に見えるかもしれません。
けれど、実際はほとんどの場合、最初に描いた計画通りには進みません。
宙ぶらりんな状態は必ず起きる
調査を進める中で前提が崩れ、新しい論点が見つかる。クライアントからの反論や要望によって、方向転換を迫られる。ときには、ここまで積み上げてきた議論や資料を一度脇に置き、ゼロベースで立て直さなければならない場面もあります。
その過程で生まれるのが、「宙ぶらりんな状態」です。
ここで言う「宙ぶらりん」とは、何も決めずに止まることではありません。
むしろ逆です。すぐに一つの答えに飛びつかず、いくつかの見方や可能性を同時に持ち、動き続けている状態です。
ある場面では正しく見える。けれど別の場面では違って見える。そのズレを無理に解消せず、一度その曖昧な状態のまま考え続ける。
あるいは、答えは、出そうと思えば出せる。判断も、いまこの場で下そうと思えば下せる。けれど、そのまま決めてしまうと、どこか浅くなる。だから、それに飛びつかない。
宙ぶらりんの状態は、受け身で過ごす時間ではありません。
意図的に“保つ”ことで、はじめて意味を持ちます。複数の仮の理解を、すぐに一つにまとめず、しばらく“遊ばせておく”。そうしているうちに、どの問いを立てるべきか、どこで決めるべきかが見えてきます。
私は、様々な現場で、この「宙ぶらりん」の時間を何度も経験しました。
この感覚は、穏やかな航路を進むというより、視界の悪い海を進むことに近いです。進んでいる方向が正しいのかわからない。それでも、止まることはできない。

