「お金って、実は、一色じゃないんだよ」
仮説を持っていっても、反応が薄い。分析結果を示しても、議論が深まらない。
「マーケットがあるのはわかったんだけど、僕が知りたいのはそこじゃないんだよね」
何度もそう言われました。
不思議な感覚でした。
ロジックは間違っていないし、分析も洗練されている。それなのに、会議が終わっても、何も前に進んだ感じがしない。次のミーティングは設定されるものの、根本で話が噛み合わないまま。
だから、「どう実行するか」という話に、どうしても入っていかないのです。
最初は、こちらの詰めが甘いのだと思いました。データが足りないのか。あるいは、仮説の切り口が弱いのか。
けれど、どれだけ仮説を磨き直しても、議論が止まる。
違和感だけが、残り続けました。
転機になったのは、プロジェクトオーナーである役員の言葉でした。
その方は、外資系金融機関から移ってきた方で、キャリアのうち長い期間、個人向けの金融サービスの世界を内側から見てきた人物です。
あるとき、その人が、こちらの説明を一通り聞いたあとで、こう言いました。
「お金って、実は、一色じゃないんだよ」
少し間を置いて、続けます。
「なんのためにお金を借りるかで、金融サービスとしての意味はまったく違うんだよね」
最初は何を言っているのかまったくわかりませんでした。
ですが、その言葉をきっかけに、見えていなかったものが立ち上がってきます。
本当の「問い」を外していた
「お金を払うために借りるお金と、何か目的があって借りるお金は、まったく違うんだよね」
「消費者金融市場が急成長し、魅力的なことはわかった。でも、彼らは誰のどういう目的に応えることで成長しているのか、そこが知りたいんだよなぁ」
さらにこう続けました。
「生活を豊かにしたい、何かを実現したい、という目的があって借りるお金と、利子の返済のために借り続けるお金では、まったく性質が違う。後者は決して魅力的とは言えない。その構造がどうなっているのかを知りたいんだよ」
その言葉を聞いたとき、私たちが本当の「問い」を外していたことに気づきました。
こうして、議論の軸は、少しずつ変わっていきました。
人は、なぜお金を借りるのか。
誰が、どんな目的で借りているのか。
そして、そこに自社が関わる意味はあるのか。
たしかに、市場規模や成長率といったデータはありました。しかし、それだけでは何もわからない。
だから、私たちは消費者インタビューを行いました。どんな人が、どんな目的でお金を借りているのか。詳細は割愛しますが、そこで見えてきたのは、同じ「借り入れ」であっても、お金の意味はまったく異なるという事実でした。
その示唆をもとに、私たちは消費者金融市場の捉え方そのものを見直し、市場の定義から再構築していきました。

