家すら買えない若者は自由より平等を愛する

11月3日の米国中間選挙まで、2週間を切った。社会主義への期待が高まることは、民主党に有利に働くのだろうか。トランプ大統領は、その期待を逆に共和党への支持に変えようとしている。

調査会社大手のギャラップが9月23日に公表した調査では、18〜34歳の米国人の57%が社会主義に好意的で、資本主義への好意は43%だった。下院全435議席と上院のおよそ3分の1が改選される今回の選挙は、トランプ政権の後半2年を左右する。資本主義の中心にある国で、なぜ若者は社会主義に期待し、その期待は誰の票になるのか。

私は新著『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)第3章で、プラトンとトクヴィルから民主主義を揺さぶる構造を詳解した。今回の中間選挙も、その視点から見ると違う姿が現れる。

まず、若者が経験している経済を見てみよう。米国で初めて住宅を買う人の年齢中央値は40歳になった。全米リアルター協会(NAR)の2025年調査による数字だ。80年代には20代後半だった。

40歳まで待てば、家を買えるのか。そうではない。この40歳は、実際に買えた人たちの中央値である。購入を見送った人や、頭金を用意できなかった人の年齢は入っていない。しかも、買い手全体に占める初回購入者は21%。81年に始まった同調査で最も低く、08年より前の約4割から大きく下がっている。住まいのために貯蓄したいのに、いま住む家の家賃が貯蓄を難しくする。将来のために受けた教育の返済が、次の生活設計を圧迫する。努力することと、生活の基盤を得ることとの間に、簡単には埋まらない距離がある。

この距離を考えるとき、『国家』第8巻の一節が重く響く。ソクラテスは、富を持つ支配者が、人々の財産の喪失を抑えず、貸し付けや財産の取得によってさらに豊かになる様子を描く。そして債務を負った人々は、財産を手に入れた側を憎み、政治の変化を望むようになる。

暮らしの苦しさを自分の努力不足だと考えるうちは、自分を変えようとする。しかし、努力しても報われにくい仕組みがあり、その仕組みから利益を得る人がいると受け止めれば、変えてほしい相手は政治になる。

では、なぜ、その要求が社会主義という言葉に向かうのか。住宅や医療に不満があっても、減税や規制緩和を求める道もある。社会主義への期待は、困窮から自動的に生まれるものではない。

そこで重要なのが、不満をどのような政策に結びつける政治家がいるかである。医療費を家計だけに負わせない。住宅の負担を軽くする。巨大企業への力の集中を是正する。こうした提案が、自分の生活を変える選択肢として届くとき、社会主義という言葉の響きも変わる。

トクヴィルは『アメリカのデモクラシー』第2巻第2部第1章で、民主的な社会の人々が自由以上に平等へ強い愛着を抱く理由を論じている。自由の利益が時間をかけて現れるのに対し、平等の利益は日々の生活の中で広く感じられる、と説明する。