不安を感じた時はどうすればいいか。脳神経外科医の菅原道仁さんは「副交感神経が優位になると、脳と体がリラックスした状態になる。脳のスイッチを切り替えるためにおすすめの呼吸方法がある」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、菅原道仁『幸せな人は「感じる脳」を持っている』(宝島社)の一部を再編集したものです。

青い背景に脳の切り抜きを持つ手
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頭で止められない不安は身体から整える

感情は脳内だけで完結する現象ではなく、身体の状態と密接につながっています。

ですから、頭で考えても不安が止まらないときは、身体の側から「もう安全だ」という信号を返すほうが近道になることがあるのです。

たとえば、日本の思想や芸道では、まず身体のあり方が心を整えるという意味で、「心身」ではなく「身心」と捉える考え方があります。

実際、世阿弥の芸道論を「身と心」の状態を整える技法として読む研究もなされています。

そこで力を発揮するのが、呼吸と姿勢の調整です。とくに、吐く息を意識して長くする方法はとても有効な手段の一つです。

深く長く息を吐くと、副交感神経が働きやすくなり、高ぶった心拍や筋肉の緊張が鎮まりやすくなるのです。

「吐く息」を長く保つ効果

この調整のメカニズムの中心をになっているのが、脳から心臓、肺、消化器へと伸びる迷走神経です。

迷走神経は、体内でもっとも大きな副交感神経の一つであり、その働きは第1回でも触れた、「自律神経のしなやかさの指標」である心拍変動(HRV)にも顕著に現れます。

特に「吐く息」を長く保つことは、迷走神経の活動をダイレクトに高めるスイッチになります。すると心拍を穏やかに抑制するブレーキが働き、脳と体がリラックスした状態へと導かれていくのです。

このように、理屈で「大丈夫だ」と言い聞かせても不安が収まらないときこそ、身体の側から「もう安全だ」という信号を脳に送り届けるほうが、解決が早いことがあるのです。

言葉による説得が届かないのなら、身体からの信号で脳の判断を上書きしてしまえばいいのです。