現代人にとってスマートフォンは欠かせない存在になった。脳神経外科医の菅原道仁さんは「スマホは操作している時間以外にも脳のリソースを奪っている。こうして脳の余白がなくなると、必要な感情を感じられなくなってしまう」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、菅原道仁『幸せな人は「感じる脳」を持っている』(宝島社)の一部を再編集したものです。

スケジュール帳
写真=iStock.com/Pra-chid
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人間は深く傷つくことで成長する

心理学には、ポストトラウマティック・グロース(PTG)、すなわち心的外傷後成長という考え方があります。

人は深い苦悩や喪失を経験したあと、ただ元の状態に回復するだけでなく、以前とは違う形で成長しうるという知見です。

その過程では、新たな可能性への気づきや他者との絆の深まり、自分の中に眠っていた強さの発見などが生まれることがあります。

もちろん、苦しみそのものを美化したいわけではありません。心の痛みや感情の麻痺は、紛れもなく重くつらいものです。しかし、それは決して人生の行き止まりを意味するものではないということです。

自分の感情に気づき、少し距離を取って眺め、意味づけをほぐし直していく。その営みを通して、人は単に傷を修復するだけでなく、以前とは違う形で心をつくり直していくことができるのです。

いまあなたが感じている痛みも、そこで終わるものとは限りません。それはむしろ、あなたの脳と心が次の段階へ進むための出発点になりうるのです。

一つ一つの決断で脳は疲弊していく

このように、認知の扱いを整える一方で、次に必要になる視点は、そもそも脳が過剰に疲弊しない環境をつくることです。

私たちは1日のうちに、思っている以上に多くの判断をしています。昼食を何にするか。どのメールから返すか。どの仕事を先に片づけるか。そしてときには、「腹が立っても笑顔で対応する」といった高度な感情の制御まで求められます。

こうした小さな決断が積み重なると、脳は少しずつ疲れていきます。この脳のリソースが枯渇していく状態を「決定疲れ」と呼びます。