膨大な通知を「緊急度」で分ける

たとえば、帰宅直後の30分間は玄関に置いておく。食事の席には持ち込まない。就寝時は寝室とは別の部屋で充電する。

こうした「スマホとの距離」を意識的につくるだけで、脳の慢性的な緊張は驚くほど和らぎ、本来の感情を味わうための「余白」が生まれ始めるのです。

次に有効なのが、通知の「トリアージ」です。トリアージとは本来、医療現場で患者の緊急度を仕分ける方法ですが、ここでは「届く通知を重要度で選別する」という意味で使っています。

たとえば、不特定多数から届く刺激を緊急度に応じて三つに仕分けします。

すぐに目を通すべきもの。あとでまとめて確認すればよいもの。通知自体が不要なもの。この整理を徹底するだけで、脳の負担は大きく軽くなります。

たとえば、家族からの急ぎの連絡は即時対応する。メールやニュースは時間を決めて、まとめてチェックする。SNSのリアクションや通販のクーポン、ゲームの通知は迷わず遮断する。

スマホ内のソーシャルメディアアプリ
写真=iStock.com/Kenneth Cheung
※写真はイメージです

SNSアプリをホーム画面から隠す

さらに、アプリアイコンのバッジ表示を消し、SNSアプリをホーム画面の奥へ隠し、検索の手間を挟まないと開けないように設定する。

菅原道仁『幸せな人は「感じる脳」を持っている』(宝島社)
菅原道仁『幸せな人は「感じる脳」を持っている』(宝島社)

こうした工夫は、「意志が弱い人の小手先の技」ではありません。心理学や行動科学の知見によれば、人は刺激を受けてから行動するまでに、わずか1秒の間があるだけで、その行動を思いとどまる確率が上がることがわかっています。

スマホを手にした瞬間に反射的にSNSをタップしてしまう、その一瞬に「手間」を挟むことで、脳は「いまは本当に必要か」と俯瞰し、反射的な依存を止めてくれるのです。

ここで大切なのは、スマホから離れる時間を「我慢」と捉えないことです。それは、枯渇した脳に余白を取り戻すための、むしろ贅沢な時間なのです。

ただぼんやりする。窓の外の景色を眺める。情報を入力せず、何事にも即応しない。こうした「空白」があってこそ、脳は日中の膨大な刺激を整理し、断片的な感情に深い意味を与えることができるのです。

余白とは、単なる時間の残りかすではありません。心が健やかさを取り戻すために、確保されるべき大切な土壌です。

何かを成し遂げようと力む前に、まずはこの余白を確保する。それが、感情をリブートするためのもっとも現実的な出発点になるのです。

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