※本稿は、菅原道仁『わたしの脳のしつけ方 なぜあなたはしあわせを感じられないのか』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
「もっと欲しくなる」脳のカラクリ
いまの収入でも十分に生活できるはずなのに、もっと年収を上げたくなる。「いいね」が100件ついた日は嬉しいのに、翌日にはもっと反響が欲しいと感じる。優しいパートナーがいるのに、「もっとときめきが欲しい」と思ってしまう。いまの自分でも十分頑張っているのに、「もっと上を目指して頑張らなければ」と思う。
こうした現象に大きく関わるのが、脳内で分泌されるドーパミンです。専門用語では「神経伝達物質」と呼びますが、簡単にいえば、人間が「何かを達成しそうだ」と思うときに、脳内で分泌される物質です。ドーパミンが出ると、「嬉しい!」「楽しい!」という大きな快感が生まれ、脳に報酬の感覚を刻み込みます。
ドーパミンはやる気の源泉であり、何か行動を起こす大きな原動力になります。ですが問題は、一度感じた刺激は、回数を重ねるごとに「脳が慣れてしまう」ということ。脳には「適応」という性質があり、強烈な刺激でも何度も続くと、感度は下がる。どんな強い香りにも次第に慣れるように、幸福にも慣れてしまう。そして、「もっと強い刺激」を探し求めてしまうのです。
人間を生き残らせた仕組みが「敵」に
なぜ、このようなことが起きるのか。それは、またもや人間の進化の過程が、大きく関わっています。
私たちの脳は、食料や安全が保障されていなかった長い時代のなかで進化してきました。
周囲を見渡して自分の立ち位置を把握し、足りないものに気づき、常に「もっと」と手を伸ばす。現状に満足せず次を求める個体のほうが、生き延びやすい環境だったのです。この仕組みのおかげで、人類は厳しい環境を乗り越えてきました。
しかし、現代では、その同じ仕組みが私たちを苦しめています。デジタル社会がもたらす膨大な情報量と比較対象の多さに、脳の仕組みが対応しきれなくなっているのです。

