「今日のゴール」を言語化しておく
この実験が示しているのは、私たちの脳が「何も起きていない状態」を驚くほど苦手としているということです。たとえ少し不快であっても、「何かが起きている状態」のほうを選んでしまう。脳は常に外からの刺激を求めるようにできているのかもしれません。
「もっと欲しい」と感じる欲望は、行動を前に進める推進力になる。だから、使い方さえ間違えなければ決して悪いものではありません。しかし、その力をうまく扱わないと、前に進むエネルギーが、いつのまにか自分を悪い方向に責めてしまうことがあります。
何かを達成したはずなのに、すぐに「次はもっと」と基準が上がってしまう。
この現象を防ぐには、あらかじめ期待を言語化しておくのがおすすめです。
感情をぼんやりさせたままにせず、「ここまでできたら、今日は合格」と決めておく。余韻を固定するタイミングをつくることで、達成のあとに自分をねぎらう余白が生まれます。
「達成してから数十秒」がとても重要
また、「もっと」が暴走しやすい最大の瞬間は、達成の直後です。脳はその瞬間に予測を更新し、ゴールの基準を引き上げようとしがちです。
だから、達成したあとは、感情をそのままにせずに、しあわせを味わうほうがいいのです。
具体的な「しあわせを味わうトレーニング」については本書の4章以降で取り上げますが、まずは一つだけ基本的なものをご紹介します。
仕事でも家事でもなんでもいいので、何かを達成した直後、数十秒でかまわないので、短い区切りを入れてみてください。具体的にいえば、身体の感覚に注意を戻すだけでよいのです。自分の体温や呼吸、身体の重さ、緊張のゆるみなどを観察する。そして、評価の言葉は使わず、ただ感覚だけを感じきってください。
こうした小さな区切りが、達成の実感を脳に刻みやすくします。満足を無理につくるのではなく、満足が消えていく前に「いま確かに自分はしあわせを感じているのだ」と脳に伝える作業だと考えてください。
