がんばって生きているのに、なぜしあわせを感じにくいのか。脳神経外科医の菅原道仁さんは「人間の脳は、日常のあらゆる場面で自分と他者、過去と現在、理想と現実の差を検出しようとしている。この比較グセが幸福を遠ざけている」という――。
※本稿は、菅原道仁『わたしの脳のしつけ方 なぜあなたはしあわせを感じられないのか』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
人間の脳は「予想との差」に反応する
消耗を避け、よりしあわせに生きる。その手段の一つが、つい比較してしまう脳のクセを知ることだと私は思います。では、脳にはどんな比較グセがあるのか、順番に紹介していきましょう。
① 脳は「差」を見つけるのが大好き
脳には報酬系と呼ばれる神経回路があります。この回路は、中脳の腹側被蓋野(VTA)から側坐核へとつながっています。
この回路は「もっとやりたい!」というやる気や次の行動へとつながる学習の原動力に深く関わっています。この回路が特に敏感なのは、「報酬の量」そのものよりも「予想との差」。これを専門用語で「報酬予測誤差」と呼びます。
何かと比較したがるのは「初期設定」
たとえば、テストで70点を予想していたのに90点を取れたら嬉しくなりますが、逆に90点を期待していたのに70点だったときは落ち込んでしまうもの。
これは、脳の報酬系が「予想との差」に反応しているからです。予想よりも良い結果が出たとき、報酬系の活動は高まり、反対に思ったより結果が悪かったときは活動が低くなる。この“差”を手がかりに、脳は学び、行動を修正していきます。
脳は日常のあらゆる場面で、自分と他者、過去と現在、理想と現実を自動的に照らし合わせ、差を検出しようとします。これは意志の問題ではなく、環境の変化を素早く察知して生き延びるために進化の過程で備わった、脳の初期設定のようなものです。
つまり、私たちが比較をやめられないのは、性格の問題でも、意志が弱いからでもありません。脳がそもそも、比較するようにできているのです。


