「比べてしまうのは脳の自然な反応だ」
たとえば、レストランで最初に1万円のコースを見せられると、そのあとに並ぶ5000円や3000円のコースが物足りなく感じますし、家探しで家賃10万円の物件を見たあとでは5万円の物件がどこか見劣りして映るものです。
でも、現実の価値が下がったわけではありません。脳の“明暗調整”が変わっただけです。本来なら十分に満たされるはずの体験が、直前の強い刺激との対比によって弱く感じられてしまう。これが、コントラスト効果が幸福感に影響を与える仕組みです。
強い光を見たあとでは、部屋がいつもより暗く感じる。これと同じことが、感情の世界でも起きています。自分はしあわせを感じていたはずなのに、ふとほかの人のしあわせを目にすると、「あの人は自分よりも満たされているのではないか」と、自分の状況が色あせて見えてしまうのです。
さて、ここまで五つの脳の比較グセをご紹介してきました。「あ、これは自分に該当している!」と思ったものはあるでしょうか。こうした脳の比較グセはすべて、かつては生存するためになくてはならないものでした。現代というジャングルのなかで生きる私たちが物事を比較するのは、脳にとって当然の機能。罪悪感を抱く必要はまったくありません。
ただし、現代は「比較グセ」が過剰に反応しやすい環境にあります。大切なのは、比較が起きたときに「これは脳の自然な反応だ」と理解すること。そうすれば、心の揺れは静かになり、目の前のしあわせを見つめられるようになります。
SNSが「比較中毒者」を増やしている
現代社会において、私たちの脳を「比較中毒」にさせやすいのがSNSです。
寝る前に「少しだけ」のつもりで開いたのに、気づけば30分以上スマホをスクロールしていた。
誰かの投稿を見て「いいな」と思った直後、自分の生活が少しつまらないもののように感じる。
そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。
SNSのタイムラインには、他人の成果や楽しそうな瞬間、評価された出来事が次々と流れてきます。私たちは無意識のうちに、それを自分の現在地と照らし合わせ、「自分は遅れていないか」「足りているか」と考えてしまう。しかも比較の対象は、身近な数人だけではなく、世界中の何百人、何千人へと広がっていく。結果として、私たちは毎日、知らないうちに比較のトレーニングを繰り返しているのです。

