年収500万円が一気に物足りなくなる
④ 満足のハードルを上げる「アンカリング効果」
比較という行為そのものだけでなく、「比較の基準が変わりやすいこと」も、私たちがしあわせを感じにくくなる理由の一つです。
私たちは絶対的な数値で自分を評価しているようでいて、実際には常に何かを基準にしています。そしてその基準は、思っている以上に簡単に揺れるもの。
この揺れに関わるのが、「アンカリング効果」です。アンカリング効果とは、最初に目にした情報や数値が、アンカー(イカリ)のように心に打ち込まれて基準となり、その後の判断を左右してしまう現象です。たとえば、より高い年収や華やかな暮らしを見てしまうと、それが無意識のうちにのちの自分の判断基準になります。
友人が都心の新築マンションを購入したと知ったあとでは、いま住んでいる家が急に安っぽく感じられる。
同年代の知人が年収1200万円と聞いたあとでは、自分の年収500万円が低く思えてしまう。
結果、現実は何も変わっていないのに、いまの自分の生活が物足りなく感じられる。変わったのは状況ではなく、あくまで心のイカリの位置にすぎないのに、です。
無意識のうちにハードルが上がっていく
しかも厄介なのは、このイカリが静かに、そして繰り返し打ち替えられることです。一度引き上げられた基準にはすぐ慣れ、それが“普通”になります。こうして、満足のハードルは少しずつ上がり続けます。
昨日まで満たされていたのに、今日は急に足りないと感じる。それは、あなたが欲深いからではなく、基準が無意識に引き上げられ続け、幸福を感じにくくなっているからなのです。
⑤ 強い印象がもたらす「コントラスト効果」
私たちの脳は、直前に受けた刺激の強さを基準にして、その後の出来事を評価する傾向があります。これを心理学では「コントラスト効果」と呼びます。
報酬系や注意に関わる回路などは、直前の刺激に影響を受けやすい。なので、強い刺激を受けた直後は、次に入ってくる情報が相対的に弱く感じられるのです。
