年をとっても成長を続ける人もいれば、若くして成長が止まる人もいる。その違いは何か。「人としての器」研究の第一人者・羽生琢哉さんは「成長は、その人がもつ器を変容させられるかどうかにかかっている。成長が止まっている人は、変容の可能性を閉ざしてしまった人たちだ」という――。

※本稿は、羽生琢哉『組織の器』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

経験豊富な人ほど成長が止まりやすいのはなぜか

「一見、器が大きいように見えるけれど、どこか成長が止まっている」と感じさせる人と出会うことがあります。

経験豊富で知識も深く、スキルも申し分なく、いざというとき頼りになる。しかし、新しいやり方を提案されると「それは前にやったがうまくいかなかった」と否定的になり、自分が持つ「正解」以外の可能性に関心を示さない、というような人です。

経験を積み、知識やスキルを身につけることは、たしかに一つの成長と言えるでしょう。しかし、それはあくまで可視化できる領域で「できること」を増やした形の成長に過ぎません。

「GROWTH」と書かれた階段を上るビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
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これに対して、人としての成長の本質を問うのであれば、「器」というあり方に目を向ける必要があります。なかでも「器を変容させていく姿勢(ケイパビリティ)」を持っているかどうかが、成長を続けられる人を分けることになります。

以下では、なぜ経験豊富な人ほど成長が止まりやすいのか、そして止まった器をどう広げていけばよいのかを考えていきます。

「キャパシティ」と「ケイパビリティ」の違い

「器」という概念には、キャパシティ(Capacity)とケイパビリティ(Capability)という2つの側面があり、両者を区別して理解することが大切です(図表1)。

キャパシティは「現在の器の大きさ」であり、その人がどれだけのものを受け止められるかを表します。困難への耐性、多様性の受け入れ幅、複雑さを扱う力など、日常語の「キャパがある」「キャパオーバー」に近いもので、人間としての総合的な受容度を指します。

【図表1】キャパシティとケイパビリティの違い
組織の器』p.54より

器には、日々さまざまな「水(中身)」――仕事量、プレッシャー、責任、人間関係のストレス――が注がれます。キャパシティが大きければ、それらをしなやかに受け止められますが、その許容量を超えて限界を迎えれば、ストレスに飲み込まれ、メンタルを崩すことにもつながります。

一方、ケイパビリティとは「今後の変容可能性」であり、自らの器がこれからどれだけ成長するかに着目した視点です。たとえば、長年営業で成果を上げてきた人が、突如、人事部門への異動を命じられた場合を考えてみましょう。

ケイパビリティが低ければ「自分には無理だ」「これまでのやり方しかできない」と固執し、変化を拒みます。言い換えれば、ケイパビリティが低いとは、器が乾いて硬直化した状態を指します。

逆に、ケイパビリティが高ければ、「これまでの経験を新しい仕事に活かそう」「新しい仕事から従来のやり方を見直そう」と柔軟に学び、困難を成長の機会として受け止めることができます。

現在の環境では経験豊富で頼りになる人(=キャパシティ大)であっても、過去の成功体験に縛られて新しい環境に適応できない(=ケイパビリティ低)というケースは珍しくありません。逆に、経験が浅くキャパシティが小さくとも、学習意欲が高くフィードバックを素直に受け入れる人はケイパビリティが高いと言えます。これまでの蓄積によってキャパシティが大きいことに満足してケイパビリティを閉ざしてしまえば、それ以上の成長は見込めません。

このように、器は静的なものではなく、常に変化しうる動的なプロセスとして捉えることが大切です。