成長が止まっている人々の4つの共通点

ケイパビリティを閉ざして、器の成長が止まっている人には、いくつかの共通した特徴が見られます。

土から芽を出して成長する緑色の苗
写真=iStock.com/Katya Slavashevich
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第一に、自分なりの「正解」を持っていることです。長年の経験から「こうすればうまくいく」というパターンを確立しており、そこへの固執が新しい可能性への扉を閉ざします。経験そのものは財産ですが、「これが正解だ」という確信に変わったとき、学びは止まってしまいます。

第二に、失敗を避けようとすることです。高い責任感がある一方で、現在の地位や評価を守ることを優先するあまり、リスクのある挑戦を避けがちになります。しかし挑戦しなければ失敗もなく、失敗がなければ成長の契機も生まれません。その責任感や慎重さが、いつのまにか停滞の原因になっていることがあります。

第三に、他者からのフィードバックを受け入れないことです。批判や異なる意見を、成長の糧ではなく脅威として受け取る傾向があります。表面的には耳を傾けているように見えても、内面では防衛的になっていることが少なくありません。その結果、自己認識を深める機会を自ら手放してしまいます。

第四に、「自分はすでに十分に学んだ」と思っていることです。豊富な知識と経験を持つがゆえに、これ以上学ぶ必要はないと無意識に感じています。新しいものへの好奇心や学ぶ姿勢を失った瞬間から、器の成長は止まります。

こうした状態は、年齢を重ねることで自然に陥るわけではありません。若くても成長が止まっている人もいれば、高齢でも成長し続けている人もいます。

また逆説的ですが、器が大きそうに見える達人ほど、「自分なんてまだまだ」という成長意欲を持っていることが多いものです。真に器が大きい人は、自分の限界を知っているがゆえに、学び続けることをやめません。したがって、何歳になっても自らの限界を超えて器の成長に向かい続ける姿勢が大切になります。

器を成長させるARCTモデルとは

では、どうすればケイパビリティを高めて、器を広げていくことができるでしょうか。

筆者が立ち上げた器研究チームでは、器が質的に変化するプロセスを体系化し、インタビュー調査によってその妥当性を検証してきました(図表2)。このプロセスを、4つのフェーズの頭文字を取って「ARCTモデル」と名付けています。

A:蓄積(Accumulation) ――経験や変化の影響が積み重なる段階
R:認識(Recognition) ――現在の器の限界に気づく段階
C:構想(Conception) ――新しい器を思い描く段階
T:変容(Transformation) ――意識や行動を変え、実際に新しい器を形づくる段階
【図表2】器の成長プロセスイメージ(ARCTモデル)
組織の器』p.100より

ARCTは「より高い段階に到達すること」を目的とする発達段階モデルではなく、回し続けること自体に意味がある循環モデルです。4つのフェーズが繰り返されることで、器は螺旋状に広がっていきます。

器の成長を考えるうえで特に重要なのが「認識(R)」のフェーズです。限界に直面すること、すなわちキャパオーバーの体験が、新たな器を「構想(C)」するきっかけになります。

多くの人にとって、自分が大きく成長したと感じられる出来事は、うまくいった経験よりも、うまくいかなかった経験にあるのではないでしょうか。プロジェクトの失敗、信頼していた人からの裏切り、自信を持っていたことが通用しなかった経験、夢の挫折、健康の喪失、大切な人との別れ――。

こうした経験は、その瞬間は苦しくとも、後から振り返れば自分を成長させたと気づくことが少なくありません。困難の最中では、普段は隠している弱さや未熟さが、否応なく顔を出し、感情的になる、防衛的になる、視野が狭くなるといった、器の小さな振る舞いが表出します。

しかし、こうした器の小さな側面を見つめることが、成長を進めるきっかけになります。自分自身の限界を肯定的に受け止め、新たな構想につなげることで、器は広がっていくのです。