京都の老舗料亭や精進料理のイメージが強い湯葉を、東京・表参道で“若者のランチ”に変えた店がある。手がけるのは、600年続く京都の寺に生まれた渡邊尋思さん(30)。28歳で江崎グリコを辞め、8カ月無収入になりながら、後継者不足に悩む湯葉業界に飛び込んだ。2026年1月に開いた店では、用意した約80食が開店から3時間で完売。観光客にすら選ばれにくくなった京名産の伝統食を、なぜ表参道で売れる商品に変えられたのか。フリーライターの吉田ゆみさんが取材した――。
株式会社yuppa代表・渡邊尋思さん
筆者撮影
株式会社yuppa代表・渡邊尋思さん

京名産の湯葉に可能性を見出した男

京都の老舗料亭で、醤油をひとたらしして味わう繊細な一枚――「湯葉」と聞けば、多くの人はそんな景色を思い浮かべるだろう。食文化の変化で地元でも日常的に食べる機会は減り、京都で生まれ育った筆者も「観光客しか食べへんもん」という印象だった。しかし、現在京都には観光客向けの飲食店が乱立し、もはや観光客にすら選ばれにくいものとなっている。

そんな湯葉を“巻いて”、東京・表参道のど真ん中でファストフードとして提供している店がある。

手がけたのは渡邊尋思じんしさん30歳。大阪大学を卒業し大学院まで進み、江崎グリコで新規事業責任者を任されていた男だ。彼は後継者不足にあえぐ湯葉という斜陽産業に、キャリアを手放し、周囲の猛反対を押し切って飛び込んだ。いったいなぜ。

まずは、そんな彼が生み出した“yuppa”を、実際に食べてみることにした。ビルが立ち並ぶ表参道駅から徒歩1分。15席のコンパクトな店内だが、大きな窓から光が差し込み、窮屈感はない。

曲線で湯葉のようなやわらかさを表現したカウンターテーブル
写真提供=yuppa
曲線で湯葉のようなやわらかさを表現したカウンターテーブル
上・アボカドサーモン&クリームチーズ、下・オリジナルまぜそば
筆者撮影
上・アボカドサーモン&クリームチーズ、下・オリジナルまぜそば

定番フレーバーは6種類、そこに期間限定品も加わる。ハンバーガーのように包み紙で巻かれ、棒状で片手でも食べやすい。

まずは一番人気だという「オリジナルまぜそば」(1000円・税込み)から。包み紙をくるりとめくると、中からあらわれたのは真っ白な生湯葉。

包み紙をくるりとめくると、真っ白な湯葉があらわれる
筆者撮影
包み紙をくるりとめくると、真っ白な湯葉があらわれる
オリジナルまぜそば(1000円・税込)
筆者撮影
オリジナルまぜそば(1000円・税込み)