※本稿は、板倉京『女税理士が教える 女性のための自分の資産のつくり方』(BOW BOOKS)の一部を抜粋・再編集したものです。
「扶養から外れると損をする」のか
あと少し働くと、年収の壁を超えてしまう。だから今月は、早めにシフトを切り上げる。せっかく仕事を頼まれたけど、断る。「損したくないから」―――そんな経験をした人もいるのではないでしょうか。
野村総合研究所の調査によると、パートで働く既婚女性の56.7%が「年収の壁を意識して働き方を調整している」と回答しています。また、同研究所の2025年1~2月の調査では、その調整をしている人の67.4%が「本当はもっと働きたい」とも答えています。
働きたいのに、働かない。
「扶養から外れると損をする」という、強烈なイメージが、女性たちにブレーキをかけているのです。
でもその「損」、具体的にいくらか、考えたことありますか?
とある夫婦のある日の会話
具体的な数字の話に入る前に、ある夫婦の話をさせてください。
妻は正社員として働き、家計の大黒柱。夫は個人事業をしながら、家事全般を担っています。夫は料理が得意で、掃除も洗濯も完璧。妻は仕事が好きで、責任あるポジションで働いている。ふたりは納得して役割を分担し、うまくやっているように見えました。
そんなある日、夫が嬉しそうに言いました。
「最近仕事の依頼が増えてきてさ。もう少し頑張れば、収入も増えそうなんだよね」
ところが、妻の反応は意外なものでした。
「あんまり頑張らなくていいよ。だって、あなたが稼ぎすぎると扶養から外れちゃうでしょ?」
夫は驚きました。「でも稼げるなら稼いだほうがよくない?」
妻は首を横に振ります。
「扶養を外れたら、社会保険料を払うことになるし、私の手取りが減るじゃない。私の会社から出る配偶者手当ももらえなくなっちゃう。だから、今のままでいいの。家事もちゃんとやってほしいし。無理しなくていいよ」
夫は困惑します。
「いや、無理とかじゃなくて、せっかく仕事が増えてきたから、ちゃんとやりたいだけなんだけど……」
妻はきっぱりと言いました。
「ううん、扶養の範囲にしておいて。そのほうがトクだから」

