阪大院→大手企業という“安定ルート“
そしてもう一つ、渡邊さんに影響を与えた出来事がある。5歳からサッカーを始め、中学でキャプテンを務めていたが、両足の疲労骨折でドクターストップがかかり続けられなくなった。「毎日泣いてました」と当時を振り返る。
ちょうど同じ頃、両親の離婚が重なる。母親を支えなければという思いが強くなった渡邊さんは、そこからすべてのリソースを勉強に注ぎ込んだ。その結果が、大阪大学理学部化学科への首席合格だった。
大阪大学大学院理学研究科まで進んだ渡邊さんは、江崎グリコに基礎研究者として入社。コロナ禍の2020年、新入社員研修はすべてZoom越しだった。フラストレーションが募った渡邊さんは、入社からわずか3週間後の4月21日、人事に「コロナ禍の新入社員だからこそできる企画をやらせてほしい」と直談判のメールを送る。それは11月11日、同社の看板商品にちなんで実施された大型企画となった。
コロナ禍で強制的に“型破り”を叩き込まれた新人が、ここから型という型を破り始める。事業創りの楽しさに目覚めた渡邊さんは、以降も経済産業省・JETROの「始動 Next Innovator 2021」選出やGLOBIS経営大学院への進学など社外活動を重ねた。入社からわずか1年3カ月でマーケティング部門に引き抜かれ、新規事業責任者を任されるまでになった。
父の創作精進料理がヒントに
そんな渡邊さんに影響を与えたのは、その間に出会った起業家たちだった。自分の意志だけを頼りに、たったひとりで事業を創る人々の生き方に強く惹かれていったという。
2021年から3年間、会社や経営の勉強と並行して、実に5つの事業を個人で考案し、調査からコンセプトづくりまでを重ねた。そのうちのひとつが、のちの「yuppa」につながっていく。原点にあったのは、常々感じていた違和感だった。
「“健康”ってどうしても真面目すぎるんですよね」
効能や機能ばかりが先に立って、食べる楽しさが失われがちだと感じていた渡邊さんが思い出したのが、父の創作精進料理だ。
精進料理はもともと、限られた食材を工夫し尽くす、和食の“もったいない”精神をルーツに持つ料理だ。ただ現代では「よくわからない」「お寺に行かないと食べられない」というイメージが先行し、すっかり遠い存在になっている。父はそんな精進料理に独自のアレンジを加え、遊び心ある創意工夫を凝らしていた。
これにヒントを得た渡邊さん。キー素材に選んだのは、精進料理の主要なタンパク源である生湯葉だった。思いついたアイデアを、iPadのメモ帳に書きなぐった末にたどり着いたのが、生湯葉を使ったファストフードだった。コンセプトは「健康に、あそびゴコロを」。

