野生のクマが交尾するのは初夏のこの時期。米田一彦さんは「交尾期が暖冬の影響で通常の6月から5月に早まり、人を襲うなど、既に危険レベルに達している。オスのクマは人間にはないペニスボーンを使って交尾をする」という――。
※本稿は、米田一彦『家に帰ったらクマがいた』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
山から出てくるクマは病弱か高齢
繁殖適齢期のオスグマの睾丸は大きくて重たげだ。秋でも陰茎を剝き出しているのは、充分に餌が摂れて体力があふれているからだ。さりとて交尾するわけでもなく、食に満たされると、クマでも何か鬱勃とした性衝動が沸くものなのだろう。
オスグマも老獣になると、睾丸が小さくなって大殿筋から大腿四頭筋にかけての筋肉も減る。後ろ姿が貧相になって素敵ではなくなるのは、人間と同じだ。
クマ大出没の前兆は例年、8月に顕著になる。凶作の影響を真っ先に受けるのは、若グマに追い立てられるように出てくる病弱・高齢のクマだ。そういうのがふらふらと里に出てきて駆除され「ブナが凶作で弱ったか」と世間は騒ぐが、病弱個体ではと判断された例は今世紀、皆無だったように思う。
クマは弱ると腰回りに顕著に症状が現れ、足腰が弱ったクマは、もはや山中で他のクマに食われるか里に出るしかないのだ。
オスグマのペニスボーン(陰茎骨)
オスグマのペニスボーン(陰茎骨)というのが興味深い。哺乳類で陰茎骨がない動物は人を含めて少数派だが、クマには立派なものが備わっている。
年齢は査定していないが、体重が重くても軽くても、長さや太さは変わらないようだ。
サルは陰茎骨が長いと交尾に有利なようだが、歳を重ねると体長が伸び体重が増えるクマは他のオスグマを制圧しメスを服従させることができるので、陰茎骨が長くなる必要がなかったのだろう。虎は自分の皮を残して威容を伝え、クマは骨竿を誇り、それを見るにつけ抜きん出た力をもたない自分は嘆き節が口を突くだけ。


