生態系の頂点なのに…クマが恐れる存在

クマは何に警戒されないように、こういう動作をしているのだろう。生態系の頂点にありながら他に警戒すべき対象といったら他の生き物ではなく、恐ろしい大オスグマだろう。

クマは小心翼々と生きているのだ。

地面のフンに首を擦りつける
筆者提供
地面のフンに首を擦りつける

一方、クマは自分の臭いを枯れ木などに擦りつけて同類のクマを脅している。

そのような枯れた立木、傾斜木は山中で稀に見つかり、木肌は擦られて黒々、すべすべになっている。そこはクマばかりではなく通りがかりのシカ、イノシシなどにも利用されている。シカやイノシシはクマの臭いを体に磨り込むことによって、その威を借りて身を守っているようだ。

2015年の夏、森を歩いているとブナの森の中に明るく開けた場所があったので休んでいると、向かいの斜面の上のほうから80キログラムほどのクマが降りて来た。

すると、このクマは、枯れた立木に抱きつくや首を立木に擦りつけはじめた。首をくねらしてみたり、耳のつけ根あたりを擦りつけたりと念入りだ。爪を叩き込んだあたりの木の皮が、ぽろぽろと剝がれ落ちた。

枯れ木に抱きついて首を擦りつける
筆者提供
枯れ木に抱きついて首を擦りつける

クマは体を擦り終えると、ふるふると首を振りながら森の奥へと消えて行った。

この立木の下に立って見上げ、次いで根元を見下ろすと、地面には細かく裂かれた枯れた木の皮の破片が広く散らばっていた。根元のほうは黒く変色していて、高さから見てイノシシも擦っているようだ。私も獣のように臭いを嗅いでみると、上のほうは酸っぱい臭いがして、根元のほうは脂臭かった。

7月に見たクマの尻が汚れていた

7月、農道脇に全身をさらした大グマは夏には瘦せているものだが、充分に肥えていた。それが肛門周りから尾にかけて毛の汚れがあり、この地方では他のクマでも同様のことが見られる。クマはその時期に得られるものを多食するのだが、柿やリンゴ食いでの尻汚れは稀だ。ここのクマが夏から初秋へと次第に尻汚れが強まるのは、ダイズの葉食いが原因のようだ。

果粒のダイズならサポニンが多く含まれるが、食べると胃腸の粘膜に作用してただれさせると言われている。人間がダイズを多食すると蛋白質の吸収が阻害されて蛋白質不足になるとされているが、この地でのクマの繁殖の成功率の高さとの関係は興味深い。