謝罪文から伝わる三越の本気と怒り
SNSでキラキラした自分をアピールする「自己顕示欲」と、食の安全に対する「無頓着さ」が同居した映像は、ネット社会において格好の「燃料」となりました。この店長の動画が拡散され、不衛生だという批判が一気に広まりました。そしてYahoo!ニュースをはじめとする大手メディアにまで取り上げられる問題へと膨れ上がっていったのです。
こうした動きに対し、三越は非常にすばやく対応しました。今回の事案において、三越はあくまで催事の「場」を提供した主催者であり、直接的な過失は出店テナント側にあります。通常であれば、法務的な責任の切り分けや、事実関係の詳細な調査、さらにはテナント側との協議などに時間を費やし、対応が後手に回るのが組織の常です。
しかし三越は、SNSでの拡大がネットニュースなどに広がるやいなや、5月5日には三越として公式な謝罪ステートメントを発表したのです。
特筆すべきは、その謝罪文の内容です。「今回の事案は明らかに不適切なものであると認識しております」という一文には、抑えた中にも同社の事件への怒りとも取れる絶妙なニュアンスが含まれているように感じます。言い訳できない問答無用の事件であるからこそ、このような明確な姿勢を示すことが、最も効果的であると判断したのでしょう。
百貨店のプライドを見せた決断力
展開の速さから考えると、この三越の「異例のスピード」は炎上発生を把握した直後から判断を進めていたのではないかと考えられます。そしてこのスピードは事態収拾において、企業の危機管理として、極めて適切だったと思います。
百貨店というビジネスモデルが経営的に厳しい環境を迎える中、それでも天下の「日本橋三越」というブランドエクイティ(ブランド資産)は彼らにとって死守すべきものです。もしここで「当社の失態ではない」「事情をしっかり把握してから」などともたついていたりすれば、炎上の矛先は三越本体へと向かっていたはずです。
一般の利用者にとって「テナント=三越そのもの」という認識は強く、その期待を裏切ることはブランドの根幹を揺るがす行為です。
何より三越がこの事件を「他人事」ではなく「自分事」として、自らの責任の所在を明確にしたことは、伝統ある大きな組織として、非常に意味があります。自らの責任として、高速で謝罪した結果、すでにメディアの露出が急速に減少し、事態は沈静化に向かいました。これはまさに、危機管理の「理想形」であったと言えます。
三越が示したこの「適切な振る舞い」がいかに難しいものか、過去の象徴的な事例を紐解くとより鮮明になります。


