占い師の細木数子とは、何者だったのか。社会学者の太田省一さんは「制作者、視聴者の期待に応えるバラエティ能力の高さがあった。さらに、当時の時代背景が彼女をテレビで欠かせない存在にした」という――。
大相撲モンゴル巡業のエンフバヤル大統領主催歓迎晩さん会に出席した故・細木数子氏=2008年8月26日、モンゴル・ウランバートル
写真=時事通信フォト
大相撲モンゴル巡業のエンフバヤル大統領主催歓迎晩さん会に出席した故・細木数子氏=2008年8月26日、モンゴル・ウランバートル

ネトフリドラマで描かれなかった細木の一面

Netflix制作のドラマ『地獄に堕ちるわよ』が大きな反響を呼んでいる。占い師・細木数子の半生を描いたもの。かつて多くのテレビ番組に出演し、時には批判も浴びながら高視聴率の立役者となった細木。そんな“細木現象”の正体はなんだったのか? リアリティショー全盛だった当時のテレビの状況に注目しつつ、改めて考えてみたい。

『地獄に堕ちるわよ』では、1938年生まれである細木数子の17歳から66歳までが描かれている。演じるのは戸田恵梨香。派手で豪快なイメージの細木と見た目や雰囲気は正反対だが、実際に作品を見ると細木を彷彿とさせる表情や仕草、さらに凄みが随所にあり、演技力の高さを改めて感じさせられる。

ここでの細木数子は、劇中のセリフを借りれば終始「強欲」な人間として描かれる。金の匂いがするものをいち早く嗅ぎ分け、策を弄しても自分が欲しいと思ったものは必ず手に入れる。事あるごとに足元をすくわれ、繰り返しどん底に叩き落されるがその都度再起。そして最終的に占い師として巨万の富を得ることになる。

細木については、批判的な声もずっとあった。霊感商法疑惑や暴力団とのつながりなどが取り沙汰され、スター歌手・島倉千代子の借金返済をめぐるゴシップなどもマスコミの格好のネタになった。このあたりは、脚色されている部分もあるだろうが今回のドラマでも描かれている。

なぜ高視聴率女王になったのか

ただ、ドラマ自体は細木数子の裏の顔を告発しようとするものではなく、「ある日本人の戦後史」になっている。敗戦直後の焼け跡から始まり、1964年の東京オリンピック、1970年代の大阪万博やオイルショックなど当時の世相に絡めて、戦後の混乱から立ち上がるたくましい日本人の代表が細木であるという構図だ。

したがって、タイトルにもなった「地獄に堕ちるわよ」などの歯に衣着せぬトークでテレビを席巻する人気者になったあたりの話は、それほど重点的に描かれるわけではない。そのあたりを期待して見ると、やや肩透かしを食らった感じになるだろう。

とはいえ、多くの人びとが細木数子と聞いて真っ先に思い出すのは、やはりその頃のことだろう。2000年代、『ズバリ言うわよ!』(TBSテレビ系、2004年放送開始)や『幸せって何だっけ 〜カズカズの宝話〜』(フジテレビ系、2004年放送開始)といった細木の番組は軒並み高視聴率をあげた。一度は見たというひとも少なくないはずだ。

では、当時細木数子はなぜあれほど絶大な人気を博したのか?