「テレビの常識」を破壊した

まず、細木自身にタレントとしての才があった。単にトークがうまいというだけでなく、「地獄に堕ちるわよ」といった暴言ギリギリの言葉のチョイスもハラハラ感を生み、人気につながっていた。

さらには独自の六星占術に基づく予言もわかりやすく、視聴者の興味を引きやすいものだった。むろん当たったものも外れたものもあるが、有名なところでは1985年の阪神タイガースの21年ぶりのリーグ優勝と日本一を的中させて世間の注目を集めた。

また芸能人に対して結婚や離婚の時期を予言することもよくあった。

結婚はまだしも、離婚についてテレビで予言することは珍しい。テレビは基本的に建前のメディアだ。だから出演者に対してネガティブなことは言わないのが常識。また、世の中を不安にさせるようなことも口にしないものだ。

ところが細木数子は、そのあたりをオブラートに包むことなく断言する。本人にとっては六星占術という根拠があるので動じない。占い師としては当然かもしれない。だが、テレビ番組の出演者としてはお約束を無視するもの。しかし、それが逆に忖度しない破天荒な魅力として映ったことは想像に難くない。

レイザーラモンHGとの“伝説の放送事故”

テレビのお約束を無視したという意味では、いまも語り草のレイザーラモンHGとの一件がある。

2005年、『ズバリ言うわよ!』に出演した芸人のレイザーラモンHG。当時HGは、全身黒いレザーの衣装に身を包んだハードゲイのキャラクターで大ブレーク。「フォー!」と雄叫びをあげ、「セイセイセイ」などと言いながら、腰を高速で振るのが持ちネタだった。

後楽園ホールで行われたハッスル・ツアー2008〜12.25 クリスマスSP part.2〜にて、レイザーラモンHG氏
後楽園ホールで行われたハッスル・ツアー2008〜12.25 クリスマスSP part.2〜にて、レイザーラモンHG氏(写真=Andrew Quentin/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

当然、芸人としては相手がたとえ細木数子であってもやめるわけにはいかない。HGはいつものバラエティのノリで、椅子にもまともに座らず、M字開脚の姿勢にして股間を細木に見せつける。

初対面の細木は真顔になり、「これは芸とは言えない」「こんな慇懃無礼な人は見ない」と占うことを拒否。だがそれをHGは絶好のフリととらえ、「オレの腰の相はどうですか~?」などと言いながら、立ち上がって腰を思い切り振り始める。「気持ち悪いッ!」と顔をそむける細木。完全にその場は凍りついた。

事態を収拾しようとしたディレクターは、HGに「謝ってください」と書いたカンペを出す。ところが、HGはこれも完全に勘違いして「細木さん、謝ってくださいよー」とバラエティのノリでやってしまい、とうとう細木は「なんであたしが謝らなきゃいけないの」と激怒。予定していたHGの占いも中止になり、HGは司会のくりぃむしちゅーの判断で強制退場させられた。

HGの芸風が気に入らなかったのも事実だろう。だが、細木はこの場面でも、変に場を収めたりせず、バラエティのお約束などに従わない破天荒なキャラクターを貫いたとも言える。ハプニングこそがテレビの醍醐味だとすれば、これほど視聴者の期待に応えた場面もなかった。