今年3月、トランプ大統領は同盟諸国にホルムズ海峡への護衛艦船の派遣を要求した。高市早苗首相は「法律の範囲内でできることとできないことがある」と応じ、派遣を事実上、退けた。一方、自民党は4月の党大会で発表した新ビジョンで、憲法改正は「安全保障を考えるうえで死活的に求められる」と打ち出した。
同盟国としての責任を果たすには、やはり憲法9条を変えるしかないのか。米外交問題評議会(CFR)上級研究員のシーラ・スミス氏は「憲法改正は必要ない。そもそも派遣が日本の国益にかなうかどうかが本当の問題だ」と指摘する――。
2026年3月19日、就任後初訪米でホワイトハウスを訪れた高市首相とトランプ大統領。イラン情勢が緊迫するなか、ホルムズ海峡防衛への圧力にさらされる手ごわい会談となった。
写真=EPA/時事通信フォト
2026年3月19日、就任後初訪米でホワイトハウスを訪れた高市首相とトランプ大統領。イラン情勢が緊迫するなか、ホルムズ海峡防衛への圧力にさらされる手ごわい会談となった。

――高市政権の対米政策をどう思いますか。

3月19日の日米首脳会談は高市首相にとって、実に手ごわいものだった。日本側の当初の狙いは、3月末から4月初めに予定されていた米中会談を前に対米投資について協議し、日米同盟を再確認することだった。

だが、イラン戦争の勃発で情勢が緊迫。トランプ大統領は日米首脳会談の数日前、日韓や欧州の同盟国を名指しし、ホルムズ海峡を防衛すべきだと非難。トランプ節をさく裂させた。

そんなストレスの多い状況下で、高市首相は会談をうまく乗り切った。日本は、実に抜け目のない対トランプ外交を展開してきた。

安倍晋三元首相がトランプ大統領との関係で築いたものは、個人的な親交にとどまらない。最大の功績の一つは、勤勉で誠実だという日本人の国民性を大統領に知らしめたことだ。10年前に出馬した頃と比べると、トランプ大統領の日本人観は大きく変わった。

――米ニューヨーク・タイムズ(3月20日付)の取材に対し、あなたは「同盟国が完全に責任を免れるかどうかはわからない」と答えていますね。

シーラ・A・スミス(Sheila A. Smith)
シーラ・A・スミス(Sheila A. Smith) 米外交問題評議会(CFR)上級研究員。専門は日本政治・日本外交。コロンビア大学大学院で博士号取得。イースト・ウェスト・センター研究員などを経て現職。日米友好基金委員長、日米文化教育交流会議米国側委員長などを歴任。(写真=Jeremy Sherlick/CFR)

同盟国にとって、ホルムズ海峡問題は試練の場だ。トランプ大統領は同盟国への批判を再燃させた。こうして相手の「急所」を見極めるべく威圧的な態度を取って探りを入れ、一転して妥協するのが彼の交渉スタイルだ。

防衛費の増額など、米国と同盟国の「負担の分担」を求める交渉では、やや高圧的な口調が続くだろう。

そうした、強い発言と実際の政策が一致しそうな局面は2つ。まず、戦争終結後のホルムズ海峡だ。米政府は日本をはじめとする同盟国に、機雷掃海など、主体的な役割を期待するだろう。

次に、在日米軍駐留経費の協議だ。「米国は日本を守っているのに、日本は何もしない」といったレトリックが飛び交うと予想する。まさに、日本の防衛政策の真価が問われる正念場だ。