オーストラリアで30年以上検討と頓挫を繰り返してきた高速鉄道計画が、ついに動き出した。第1フェーズの建設費は700億〜900億豪ドル(約8兆〜10兆円)。連邦政府単独のインフラ事業として史上最大規模だ。技術パートナーの候補は、日本、欧州、中国。だが、海外メディアの報道を見れば、日本の新幹線が選ばれない理由がほとんど見当たらない――。
東海道新幹線の浜松―豊橋間を走行する、JR東海所属のN700S系J2編成
東海道新幹線の浜松―豊橋間を走行する、JR東海所属のN700S系J2編成(写真=MaedaAkihiko/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

動き始めたオーストラリアの高速鉄道計画

「人が住む大陸で唯一、高速鉄道を持たない国がある。われわれオーストラリアだ」

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は今年2月、豪公共放送ABCニュースの番組に出演し、そう語った。南米にも開業済みの高速鉄道を持つ国はなく、ブラジルやチリで計画があるのみだ。ただ、アルバニージー首相が先進国の指導者として強い焦りを滲ませた発言であることは間違いない

これまで30年以上にわたって検討と頓挫を繰り返してきた、オーストラリアの高速鉄道計画。だが、その事業が、ついに大きく動き出した。

今年2月24日、連邦政府インフラ・交通担当のキャサリン・キング大臣は、オーストラリア高速鉄道局(HSRA)が事業計画書(ビジネスケース)を公表したと言及。

全線開業すれば、オーストラリア南東端のメルボルンから首都キャンベラを経て出て北方へ進み、シドニーを抜けてブリスベンに至る、東海岸を縦断する大動脈となる。

今後50年間で2500億豪ドル(約28兆円。6月1日現在のレート、1豪ドル114.57円で換算、以下同)の経済効果を生み、9万9000人以上の雇用を新たに創出すると試算されている。

建設費は10兆円規模

第1フェーズではまず、国土の南東に位置する最大都市シドニーと、そこから191キロ北にあるニューカッスルの街を結ぶ。東京―静岡間に相当する距離だ。

HSRAの最新の試算では、同フェーズの建設費は700億〜900億豪ドル(約8兆〜10兆円)。オーストラリア日刊紙のシドニー・モーニング・ヘラルドは、豪連邦政府単独のインフラ事業として史上最大規模になると報じる。

キング大臣は「オーストラリアで最も人口の多い地域で、人々の暮らし、仕事、移動を変える」と意義を強調した。同国初の高速鉄道区間として、すでに与野党がそろって支持に回っており、間もなく事業性評価が公表される見通しだ。

背景にあるのが、逼迫する輸送需要だ。シドニー―ニューカッスル間は現在、鉄道でも車でも約2時間半かかる。ニューカッスルから近郊のマッコリー湖までの道路網は平日1日あたり9万1000台の自動車が通過するが、事故による渋滞が絶えない。

巨額の公的資金を投じる、オーストラリア高速鉄道計画。技術パートナーの選定は同国の交通基盤の今後半世紀を左右する重要な決断となる。考えられる候補は、日本、欧州、中国。いずれも独自の高速鉄道技術を擁する。