「多層にわたる冗長性」が安全性の基礎に

いずれの事故にも共通点がある。ドイツ・エシェデでは車輪の破損、中国・温州では停電と、たった一つの障害をきっかけに、安全を支える仕組みをすべて失ったことだ。

当然、完璧な設計というものは存在しない。それでも新幹線は、多層にわたる冗長性を確保することで、こうした単一障害点(ある1点に不具合が起きると全体の安全性が損なわれる致命的弱点)をあらかじめ極力排除している。

JR東海によれば、1964年に開業した東海道新幹線の累計旅客数は64億人に達する。インターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルが取りあげるように、1日平均368本が最短4分間隔で走り、平均遅延時間はわずか42秒だ。これほど高密度での運行を続けながら、英日刊紙のガーディアンが伝えるとおり、列車事故による乗客の死者は開業以降、約60年にわたり一人も出ていない。

東海道新幹線の開業当初に投入された「新幹線0系電車」
東海道新幹線の開業当初に投入された「新幹線0系電車」(写真=Cassiopeia sweet/PD-self/Wikimedia Commons

新幹線が克服した騒音という難題

安全性と並んで日本がリードするのが、騒音対策の技術だ。高速鉄道が都市部を走る以上、沿線住民の生活環境への影響は避けて通れない課題である。事故の防止に加え、日々の騒音や環境負荷の管理も問われる。敷設にあたり沿線住民の理解を得る上でも、騒音性は大きなポイントとなる。

列車の運行速度が2倍になれば、空気抵抗は4倍。空力騒音に至っては速度の6乗に比例し、音圧は18デシベルも跳ね上がる。実は日本も、かつてはこの課題に悩まされた国の一つだった。インターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルは、1964年の東海道新幹線の開業で速度がほぼ倍増し、この問題が顕在化したと振り返る。

東海道新幹線開業当時、沿線の騒音は約90デシベルにも達していた。だが、1975年には、日本政府が新幹線の沿線騒音について環境基準を法的に制定。インドの国営高速鉄道公社NHSRCLが各国基準を整理した技術文書では、住居地区で70デシベル、商業・工業地区で75デシベルというこの基準は、ピーク騒音の瞬間最大値を抑える指標として、世界の高速鉄道規制のなかでも厳しい部類に属すると評価されている。

その後、環境省が公表する資料によると、1985年度から「75デシベル対策」を3段階で実施。対象区域内のすべての計測地点で基準達成を確認した。1999年には低騒音パンタグラフと絶縁体カバーが導入されたと、インターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルは報じている。速度を落とさず音を抑えるという一見して矛盾する要求に対し、日本は改善を続けてきた。