「一方だけが勝つようなディールでは、最終的に全員が損をする」とユーリー氏は言う。同氏の交渉術はベネズエラ情勢にも応用できそうだ。双方が勝者になるには――。

「交渉を成功させるカギは、全員を勝たせる『プラスサム』思考だ」

ハーバード大学交渉学プログラムの共同創設者、ウィリアム・ユーリー氏は、こう話す。同氏は、冷戦や南米ベネズエラの政治的混乱、戦争、ビジネス上の対立など、数々の紛争をめぐって交渉や助言を行い、「伝説の交渉人」としての地位を確立した。

同氏の著書で世界的ベストセラーの『Getting to Yes』は、出版から約45年たった今も世界中で読み継がれている(邦訳版は『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』ロジャー・フィッシャー・共著、岩瀬大輔・訳、三笠書房)。

トランプ米大統領のディール(取引)外交をめぐる対立や、資源をめぐる国家間の攻防など、私たちは「紛争の時代」を生きている。

全当事者の利益を満たし、「プラスサム」の世界を築くためのハーバード流交渉術とは? その極意をユーリー氏に聞いた。

コインの上で交渉成立の握手をしているミニチュア人形
写真=Rattana.R/Shutterstock

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――交渉で最も多い「駆け引き型」は良い結果が出にくいそうですね。

駆け引き型の根底にあるのは、人生を勝ち負けで考えるゼロサム思考だ。片方がパイを取れば他方の取り分は減る、という誤った思い込みだ。

しかし実のところ、交渉の大半は「人間関係」を軸にして行われる。単なる勝ち負けではない。双方の利益を満たすディールも可能だ。交渉を成功させるカギは、ゼロサムから「プラスサム」思考への発想の転換だ。

重要なのは、「どちらが勝つか」という問いを、「どうすれば双方の核心的利益を満たせるか」という問いに変えることだ。これが、ハーバード流「原則立脚型交渉術」の真髄だ。