世界最高峰のリーダーを目指す経営大学院の学生たちが、日々鍛えられている、コミュニケーション力。中でも話を聞く力は、リーダーシップの基本だ。世界の超一流の聞き方とは、どのように磨かれるものなのか。

コミュニケーションを重視する超一流の授業

2001年にアメリカのコロンビア大学経営大学院でMBAを取得して以降、ハーバード、スタンフォード、コロンビアなど世界トップレベルの経営大学院の授業や研修を題材に、10冊の本を執筆してきました。

経営大学院は英語ではBusiness School(ビジネススクール)ですから、「プレゼン資料のつくり方」「エクセルの活用術」といった実践的なスキルが教えられているイメージがあるかもしれませんが、実はこうした仕事術はほとんど教えられていません。では何を指南しているのかといえば、「一流のグローバルリーダー」になるための思考様式と行動様式です。

今回のテーマは「世界トップの経営大学院で教えられているコミュニケーション」とのことですが、世界最高峰の経営大学院では、選択科目に必ず、「会話術」や「交渉術」の講座がありますし、その他の科目でも、リーダーとしての会話やふるまいを訓練する機会が数多く設けられています。

日本では、現場の一般社員を対象としたコミュニケーションの本が多数出版されていますが、経営大学院で教えられているのは、リーダーとしてのコミュニケーション。百戦錬磨の元CEOなどが教員を務め、一流のリーダーたるもの、どのようなコミュニケーションを取るべきかを、具体的に伝授しているのです。

たとえば、スタンフォード大学経営大学院のアーヴィング・グロースベック特任教授が「経営者としての会話術」という授業で強調して教えていたのは、会話における相手への配慮、思いやり、気くばりの重要性でした。

また、コロンビア大学経営大学院で講演した著名な投資家ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイCEO)は、私たち学生からのどんな質問にも真摯に、かつユーモアを交えながら答えてくれました。バフェット氏からは「後輩たちの学びになるような話をしよう」とする姿勢がひしひしと伝わってきました。コロンビア在学時、多くの経営者の話を聞く機会がありましたが、どの経営者も非常にコミュニケーションに気を遣っていたのが印象的でした。

なぜ、世界トップレベルの経営者が、周りの人との会話にこれほど細心の注意を払うのかといえば、「リーダーとして成功するのも失敗するのも、周りの人とのコミュニケーション次第」だからだと思います。

チームメンバーを鼓舞してやる気を引き出し、忌憚ない意見をどんどん出してもらえば、チームは生産的になり、リーダーとしての評価はどんどん上がっていきます。反対に、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、コミュニケーションで失敗すると、一発でキャリアが終わってしまいます。特に訴訟リスクが大きいアメリカでは、細かいコミュニケーションマニュアルを用意している会社さえあります。

以前、外資系企業で上級管理職を務めていた際、上司から不用意なコミュニケーションについて注意されたことがありました。「あなたの英語はカジュアルすぎる。リーダーにふさわしいプロフェッショナルな文章を書きなさい」と。そう言われて、アメリカ人上司の書く丁寧な文章を真似して改善していったのを覚えています。それほどコミュニケーションは重要なのです。

「聞く」ことはリーダーシップの基本

ハーバード、スタンフォード、コロンビアなど、一流の経営大学院のリーダーシップの授業では、「質問すること(Ask)と、相手の話を聞くこと(Listen)は、リーダーシップの基本である」と教えられています。