ニュース番組内のインタビュー。丁々発止のやり取りを通してキャスターは相手の話を引き出していく。どうすればその技術を一般社会でも応用できるのか? 報道畑20年の人気キャスターが解説する。

なぜ人の話を最後まで聞くことができないのか

政治担当記者として与野党の政治家から情報を聞き出す仕事をしたのち、経済担当ディレクター、海外支局勤務を経て、現在はニュース番組でキャスターを務めています。記者時代は水面下で取材をして情報を引き出すことがメイン、現在はカメラの前で、ゲストの話を聞いて視聴者の方にわかりやすく話を伝える立場ですが、いずれも聞く力が重要な要素です。

対談やインタビューでは、相手の持っている情報や魅力を引き出しつつ、丁々発止のやり取りを見せなければなりません。そのため、相手の話を聞きながらも、次の質問に意識の半分を割いたり、時に相手の冗長な話を遮ったりもしますが、これがいきすぎると「相手の話を聞かずに、自分の聞きたいことだけを聞き出す」姿勢になってしまいます。そのため、カメラを入れない取材では、とにかく聞く姿勢を最優先にする必要があります。

自分の質問を優先して人の話を聞いていない人は多くいます。人は誰でも、とにかく喋りたい、自分の話を聞いてもらいたいという強い欲求を持っているからです。本来ならば、10割は何の予断も持たずに人の話を聞いてから次の質問に移るのが理想です。しかし、実際には話を聞いている最中も相手に対する勝手な予断を持ち、最後まで話を聞かないうちに「いや、そうじゃなくて」などとカウンターパンチを打ってしまうこともあるでしょう。

これはビジネスの場面でもよくあります。人の話を聞く前に自分の話をして、「自分は知的であり、優秀である」「間違っていない」ことを見せつけるゲームを展開してしまいがちです。

では、どうすれば人の話を聞く姿勢を養うことができるのでしょうか。まず、「相手に賢く思われたい」といった、人の話を聞くうえでのノイズ=自己満足を極限まで小さくすることです。そうした小賢しい欲求から完全に解き放たれることで、まずは相手の話に耳を傾ける余裕が生まれてきます。

そして、沈黙を恐れないことも大事です。質問に対して、相手が沈黙してしまうと、返事を待てずにこちらから畳みかけてしまうことがあります。

沈黙にもいろいろな種類があります。まずは我慢して、相手が質問の意図を理解するのが難しいのか、熟慮しているだけなのか、観察する必要があります。「沈黙は人を殺さない」と肝に銘じ、5秒ほどは待ってみることが重要です。

人の話を聞く訓練の場として、おすすめしたいのが喫煙室やバーです。煙を吸って吐いている間は言葉を発することができません。それでも会話は成り立っていますし、沈黙を気にする人はいないからです。バーは、バーテンダーがお酒を用意しながら客の話を聞く場であるので、こちらが話さない限り沈黙が続きます。まずはこれに慣れてみます。

私は最近、趣味も兼ねてバーを開拓しています。カウンターで仕事から離れた会話を交わし、「どの蛇口をひねれば新しい話が出てくるのか」「どんな聞き方をすれば、話が転がっていくのか」を試してみるのです。

「予習」を伝えるかどうかは慎重に判断

特定の個人から話を聞く場合、私は事前に可能なかぎりリサーチをしてから臨むようにしています。著名人であれば著作やインタビュー動画に目を通し、一般人でもSNSを探して何を発信しているか、何を伝えたがっているかを確認。前述した「蛇口」を探っておくのです。

(構成=梶原麻衣子 撮影=関 竜太)