新年の初詣は日本人であれば常識だろう。企業の繁栄や成長にどうつながるのか。日本人や日本企業のスピリチュアリティのあり方にはどんな特徴があるのか。ハーバード大学経営大学院が注目するポイントを解説する――。

なぜ企業は毎年1月に神田明神に参拝するのか

毎年1月の仕事始めの時期、東京都千代田区の神田神社(神田明神)には多くの企業関係者が訪れ、商売繁盛や従業員の健康・安全を祈願する。2026年も1月の1カ月間で約1万、年間で約2万5000もの企業・団体による参拝が見込まれているという。

神田神社の権禰宜、髙島たかしま瑞暉みずき氏によれば、そもそも神田神社で「企業・団体参拝」が始まったのは、約50年前。当時の宮司が「商売繁盛の神様を祀る神社は自らも繁栄すべし」との考えから、神田・日本橋・大手町・丸の内など、氏子地域の企業に「法人参拝」という新たな参拝方法を提案したのがきっかけだった。その後、日本経済の成長とともに、これらの地域の企業が大きく成長。これが「神田神社のご利益ではないか」と評判をよび、現在では多くの企業の役員・社員が押し寄せるようになったという。髙島氏は「最近は中国、韓国、台湾など、外国企業の方々も参列されていて、法人参拝の数はさらに増えています。年始は御社殿に入りきらないため、各社に人数制限をお願いしているほどです」と話す。

また神田神社の氏子地域、大手町・丸の内に縁のある企業が「守り神」として大切にしているのが、三井物産ビルの東側にある「将門塚」だ。

「将門塚」は平安時代の武将、平将門の首を供養するために1307年に建立されたものだが、もともと、この一帯は、神田神社が創建された場所。730年、出雲氏族の真神田臣まかんだおみが大己貴命おおなむちのみこと(=国造りの神様)を祀る祠をたてたのが始まりとされている。

東京の中心地にあるため、これまで幾度となく取り壊しや移転の計画がもちあがったが、そのたびに頓挫。約1300年もの間、この土地の守り神として崇敬され続けてきた。現在、保存管理や清掃業務を行っているのは「史蹟将門塚保存会」。その参与法人には、三菱地所、三井物産、大樹生命、丸紅など錚々たる企業が名を連ねている。

このように日本企業には、企業参拝に限らず、神道、仏教などに由来する様々な行事や慣習があるが、これらはどのように商売繁盛や企業の成長につながっているのだろうか。

ハーバードで人気の意外な最新授業

チベット仏教のシンギングボウルの音が響き渡る教室で、呼吸を整えるグラウンディングエクササイズをして、世界のトップリーダーからリーダーシップを学ぶ――こんな新しい選択科目が、2025年1月、ハーバード大学経営大学院で開講された。

科目の名前は「スピリチュアル・ライブズ・オブ・リーダーズ」。「経営者や管理職のスピリチュアリティ・宗教・信条はリーダーシップや意思決定にどのような影響を与えるのか」「なぜ、自分とは異なる宗教・信条を理解することが、優れたリーダーになるために大切なのか」といったことを学んでいく(注:スピリチュアリティとは「人知を超えた何ものかとつながっている感覚」。その実践には宗教未満の幅広い行為を含む)。この選択科目が新設された背景には、近年、学生たちの間で、スキルを学ぶ講座よりも、「幸福論」や「人生論」など、人間をテーマとした講座が人気を集めていることがある。

「スピリチュアル・ライブズ・オブ・リーダーズ」はハーバード大学経営大学院でも人気の科目。
「スピリチュアル・ライブズ・オブ・リーダーズ」はハーバード大学経営大学院でも人気の科目。

授業の目玉は何といってもゲストスピーカーによる講演だ。メルク、ノバルティス、P&Gなど、世界の名だたる企業の経営者・元経営者が来校し、スピリチュアリティ・宗教・信条の観点から自らのリーダーシップ経験を語る。

講座を担当するニエンハ・シェ教授によれば、スピリチュアリティを実践したり、宗教の教えなどについて学んだりすることは、次の4つの点で、優れたリーダーシップを発揮することにつながるという。