厄年を意識するなら、科学的な裏付けがある「科学的厄年」のほうがいい。75万人調査で判明した病気の発症リスクが高まる年齢と予防策を紹介する。

平安時代から今も続く厄払い、厄除け

日本には昔から「厄年」の考え方があります。厄年とされる年齢を迎えると病気などの災難が降りかかりやすく、人々はそれを避けるために厄払いや厄除けをします。平安時代から始まったこの風習は今も引き継がれています。

厄年に科学的なエビデンスはありません。ただ、ある年齢になると病気が発症しやすくなるのは医師としてそれなりにうなずける話です。

人が病気になる要因は「遺伝」「環境」「加齢」「生活習慣」の4つです。このうち時とともにリスクが高まるのが加齢要因です。年齢を重ねるにつれて誰でも臓器は弱って衰えます。ある年齢を迎えたら特定の病気にかかりやすくなるのは自然なことなのです。

ただし、かつての厄年が現代にもそのまま当てはまるとは思いません。前述の病気になる要因のうち、環境は経済や教育などの状況を、生活習慣はライフスタイルを指します。これらは遺伝要因と違って時代とともに変化します。だとすれば、大病が襲ってくる厄年も変化して当然です。

芝浦スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生が、約75万人のレセプト(診療報酬明細書)データをもとに、脳血管疾患や認知症、糖尿病、がんなどの7つの疾患について、発症のリスクが高まる年齢を分析したことがあります。具体的には男性が満年齢で24歳、37歳、50歳、63歳。女性が25歳、39歳、52歳、63歳が発症リスクの高まる年齢でした。

板倉先生はこれを「新厄年」と名づけて啓発活動をしていますが、かつて聖路加国際病院で宿泊人間ドックを担当し、現在は訪問医療でシニアの患者さんを診ている私の経験則ともだいたい一致します。厄年を意識するなら、従来の厄年より、統計的な裏付けがある科学的厄年のほうがいいでしょう。

【図表1】長年の蓄積による科学的厄年は発症後も尾を引く

注意したいのは、人によって科学的厄年は変わるという点です。

かつてはみんな同じような環境で同じような生活をしていたため、病気を発症する年齢もだいたい同じでした。しかし社会の格差は広がり、ライフスタイルも多様化。病気になるタイミングの個人差が大きくなっています。