実は仕事の8割は手を抜いても問題ない

「成果の8割は全体の2割から生まれる」という「20対80の法則」をご存じでしょうか。重要な2割から全体の8割の成果が出るという法則です。言い換えれば仕事には「力の入れどころ」と「抜きどころ」があるということです。

ところがかつての私は、100の仕事があればそのすべてに全力を尽くしていました。それが間違いだったと気づいたのは、2017年に出版した本『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』が売れ始めてしばらくたったころでした。この本が広く読まれたおかげで、本の内容に関連した講演や研修の依頼も入ってくるようになりました。本を読んでくれた方がSNS経由で感想を送ってくれたり、友達や親戚など関係の近い人から相談されたりと、対応すべきことが一気に増えたのです。はじめのうちは大勢の人から求められるのが嬉しくて、片っぱしから依頼を引き受けていました。しかし、そんな状態が続くと、忙しすぎて睡眠不足になり、気持ちが焦るばかりで何も成果が出ない状態に。明らかにキャパオーバーです。「もしかしたら忙しさにかまけて、自分が本当にやらなければいけないことを誤魔化しているのではないか」と反省した私は、一回立ち止まって自分が日々どんな仕事をどれくらいやっているのか、全部書き出してみました。すると自分がやらなくてもいいようなことに、ずいぶん時間を費やしていたのです。

たとえばSNSでは不特定多数の人からの反応があります。もちろん変なメッセージは放っておきますが、「いま高校3年生です。留学したいけど、どうしたらいいですか」などと言われると、ついつい「頑張ってるんだな」と思って答えてしまう。当然金銭は発生せず、ボランティアで相談にのることになります。

そんな状態が続き、「これはどこかで線引きしないと自分が潰れてしまう」と思った私は、やるべき仕事とやらなくてもいい仕事を分けることにしました。具体的に言うと、SNSやメールの返信、スケジュール調整、ある程度フォーマットがある書類の作成など、自分以外の人でもできることは人にまかせる。そして自分は自分にしかできない仕事に集中する。私の場合、自分にしかできない仕事とは、いろいろな方とコミュニケーションをして仕事を取ってくること。その仕事を社員やフリーランスの方と協業して行い、彼らにしっかりと報酬を分けていくことです。だから自分はそこに集中できるようにして、それ以外の部分はいろいろな人に振る。そう決めて実行するようになってから、明らかに仕事の能率はアップしました。

このとき以来、私は「やらなくていい仕事」を捨てることの大切さを強く意識するようになったのです。

「そもそも必要か」と本質を考える癖をつける

要領よく仕事をするには、仕事の本質を見極めることが必要です。そのために私が意識的に心掛けているのが、ゼロで考えること。つまり、その仕事がゼロだったらと考えるのです。「もし、その仕事をやらなかったらどうなるか」「それがもしこの世になかったらどうするか」と考えてみる。すると、本当はなくてすむことも意外と多いことに驚くのではないでしょうか。

それなのになぜ私たちが無駄な仕事をしてしまうかといえば、ゼロで考えるのが面倒くさいからです。それよりやってしまったほうが早いし、忙しくしていればナゾの充実感もある。

さまざまな研究によれば、人間は一日に数え切れないほど多くの判断をしているといわれます。食事を見て、「どのおかずから箸をつけるか」「次に何を飲むか」というような、ほとんど無意識の判断を含めると、その数は3万回超に及ぶのだとか。だから脳はなるべく判断の数を減らしたい。そのため何も考えずに前例を踏襲したり、言われたことに反射的に従ったりしてしまうのでしょう。

でも、その中には、やらなくてもいいことがたくさん含まれています。確かにエクセルやパワーポイントの達人になって、資料を速くつくれるようになることも大事です。しかし、その資料は本当に必要なのでしょうか。そもそも、その資料が使われる会議は必要なのでしょうか。もし会議をしなくてもたいした影響がないのであれば、やめるのが一番いい。やることよりも「やらないこと」を決めるのです。

無駄な仕事を一生懸命しないために私が標榜するのが、「80点主義」です。そもそも仕事における100点は存在しません。学校のテストではないので、正解は1つではないからです。それなのに自分なりの100点にこだわり細部を磨き上げたところで、その努力は相手にとって意味がないことも多いのです。では、どうすればいいかというと、まずは「80点でいい」と腹をくくり、修正の余地を残しておくこと。そして相手の期待がどこにあるかを確認します。なぜなら自分は80点をとったと思っていても、残りの20点の中に相手が一番大事にしているところがあったら意味がないからです。そのためには納期が最優先事項なのか、それよりなるべく丁寧に仕上げてほしいのかなど、相手の優先順位を事前に確認しておくことが重要です。