今日の社会において、一人ひとりの個性を大切にするのが大切なのはもちろんのことだが、一方で、人が時に周囲の「空気」で動くことも事実である。その際は、個性だけでなく集団のダイナミクスが重要になる。
空気の力学は、実はあまり文化に依存しない。しばしば、日本人は空気を読むが、例えば、アメリカ人は読まないというイメージがある。しかし、実際に起こっていることを解像度を上げて見ていくと、空気の力学はアメリカにもある。
そもそも、空気を読むとは、つまり、他人の心の状態を把握し、人々がどのような方向に進もうとしているかを認識することである。このような認知プロセスを支える脳の回路の働きは、日本でもアメリカでも変わらない。
文化によって異なるのは、空気を読んだ後にどうするかである。極端なことを言えば、空気を読んだ結果、それに従わないという選択もある。空気を読む能力自体がないのではなく、読んだうえで空気の力学に抗するのである。
アップルの共同創業者のスティーヴ・ジョブズ氏は、空気を読んで敢えてそれに従わない行動をしばしばとっていた。空気の中には、マーケットも含まれる。みんながボタンのたくさんあるスマートフォンに慣れ親しんでいた時代に、スクリーンで操作をするiPhoneを発表したのは、空気を読んで敢えて従わなかったのである。
イーロン・マスク氏もまた、空気を読んで敢えて従わない経営者である。みんながロケットの再回収などできない、意味がないと思っていた時代に、敢えて挑戦して今やスペースXの技術の根幹になった。電気自動車会社、テスラの自動運転などの技術の導入も、しばしば空気に逆らった。
一方で、マスク氏は空気を読む能力を十分に持っている。自身が買収したX(旧ツイッター)のポストを見ていても、「みんなが何を考えているか」は把握していることが伝わってくる。
大切なのは、空気を読んだその後だ。空気を読みつつ、空気の力学がどうなるかを予想しながら、最後はあくまでも自分の判断、直観に基づいて行動することで、ビジネスパーソンとしてのパフォーマンスを上げることができる。空気を読むことと、判断、行動をいったんは分離することが肝心なのだ。
また、空気を読むことと判断、行動は別にすることで、自分自身の個性、ユニークさを通して集団の多様性に貢献することができる。そうすることで、変化に強いチームとなり、集団の創造性も発揮できるようになるのだ。
一番良くないのは、空気を読んだ後で、「同調圧力」に従って、あまり考えることもなく周囲の空気の力学に従うことである。そのようなことを繰り返していると、自分自身の判断能力が育まれないし、自分の個性を活かすこともできない。チームもモノカルチャーになってしまって、変化に弱く、創造性に欠ける凡庸な集団になってしまいかねない。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます



