賃上げ続きで世代間の賃金格差が縮小
深刻化する人手不足や長期化する物価高への対応を背景に、今年の春闘でも高い賃上げ率が続き、3年連続での前年比+5%超えが実現しそうだ。
日本労働組合総連合会(連合)が5月12日に公表した第5回回答集計によると、今年度の春闘賃上げ率は前年比+5.05%と、昨年度の同時点の+5.32%からは伸びが鈍化したものの、引き続き+5%を上回っている。
高い賃上げ率が続いていることと同時に、このところ世代間の賃金水準の格差が縮小している点が注目されている。厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、25~29歳の賃金を100とした各年齢層の賃金水準を年ごとに曲線で示したグラフ(賃金カーブ)をみると、ここ10年ほどで若年層と中高年層の賃金水準が近づいたことで、曲線の傾きが小さくなっている(賃金カーブがフラット化している)ことが分かる(図表1)。
賃金カーブがフラット化している背景として、企業の賃金体系が年功序列型から成果主義型へと移行しつつあることがしばしば指摘される。
日本ではこれまで、勤続年数や年齢などを基に賃金が決定される、年功序列型の賃金体系が多くの企業で採られてきた。しかし近年は、労働市場の流動化などの影響から、職務・能力・成果を重視する成果主義型の賃金体系への移行が徐々に進んでいる。
厚生労働省の就労条件総合調査によると、基本給の決定要素として「学歴」や「年齢・勤続年数」を挙げた企業の割合は2017年から2022年にかけて減少している一方、「職務遂行能力」や「業績・成果」を挙げる企業の割合は増加している。
取り残される氷河期世代
確かに、こうした賃金体系の変化によって、年齢が賃金に与える影響が低下していることは、賃金カーブのフラット化の一因と言えるだろう。しかし、それ以上に重要な要因として、「就職氷河期世代」の存在による影響が無視できない。
就職氷河期世代とは、1990年代初頭のバブル崩壊や1990年代後半の金融危機を受けた、日本経済の長期的な不況の影響で就職難となった時期に就職活動を行った世代を指す。2019年の内閣府の定義によると、1993~2004年に入社した世代が該当するとされており、大卒であれば1970~80年代前半生まれで、2026年現在は44~55歳前後となる。
この世代は、就職活動時の就職難に加えて、その後の日本経済の長期的な低迷の影響などから、その前後の世代と比較して、キャリアを通じて賃金が低水準に抑えられてきた。このような世代特有の影響(コーホート効果)によって低賃金に苦しめられている世代が、一般的に賃金水準が最も高くなる50歳前後に達していることで、賃金カーブのピークが低水準に抑制されていることが、フラット化の主な要因となっている。
また、近年は高水準の賃金上昇率が続いていることは既に指摘したが、就職氷河期世代はそうした賃上げからも取り残されている。


