同世代内の賃金格差はむしろ拡大

また、世代間の賃金水準の格差が縮小している一方で、同世代内での賃金格差はむしろ広がっている。

5歳ごとの各年齢階級の中で、賃金水準の上位10%と下位10%を除いた中間の80%に位置する人々の所定内給与のばらつきを見ると、30代後半から50代前半の年齢層を中心に、2006年時点よりも2025年時点のほうがその範囲が広がっていることが分かる(図表4、棒グラフの縦の幅)。いわば、賃金カーブは「フラット化」と同時に「ワイド化」が進んでいる状況だ。

【図表】年齢階層別の世代内での賃金格差(所定内給与・大卒男性)
出所=厚生労働省
(注)折れ線は各年代の中央値、棒グラフの上端は第9十分位数、下端は第1十分位数を表す。

この要因としては、上述の年功序列型から能力・成果主義への賃金体系の移行に加え、デフレからの脱却や「金利ある世界」への回帰といった日本経済の正常化が進展する中で、賃上げを積極的に行うことができる企業と、そうでない企業との差が明確になっていることなどが考えられる。

企業ごとの差が明確になることは、基本的には望ましい現象だと言える。①賃金の低い(≒生産性の低い)企業から、より賃金の高い(≒生産性の高い)企業へと労働者が集まりやすくなるという分配の面と、②労働力不足をカバーするための生産性向上に向けた投資が促進されるという競争の面から、経済全体の生産性も高まりやすくなると考えられるためだ。

もっとも、過度な格差の拡大は社会の不安定化といったデメリットをもたらすため、社会保障などのセーフティネットやリスキリングによる転職支援といった、国・地方自治体による公的なサポートの拡充が欠かせない。

金融資産の保有残高でも

賃金に加え、家計が保有する金融資産の大きさでも、世代間格差の縮小と世代内格差の拡大の同時進行という現象が起きている。

日本では、かつては株式・株式投資信託の保有残高は高齢者世帯に集中していたが、NISA(少額投資非課税制度)の浸透などをきっかけに、株式投資を行う現役世帯が増加したことで、保有残高の差が縮小している。

総務省の家計調査(貯蓄・負債編)をもとに、1世帯当たりの株式・株式投資信託の保有残高をみると、コロナ禍前の2019年時点では50~59歳の世帯が平均で143万円であった一方で、29歳以下の世帯では平均で13万円にとどまっており、10倍以上の格差が存在した。2025年には50~59歳の世帯が平均324万円、29歳以下の世帯が平均121万円となり、その格差は3倍以下にまで縮んでいる。

金融資産の格差のイメージ
写真=iStock.com/hyejin kang
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