4月17日、フィギュアスケートのりくりゅうペアが電撃引退を発表した。オリンピックで金メダルに輝いた二人が、このタイミングでやめたことに多くの人が驚いた。しかし、ある意味では演技と同じくらい見事で素晴らしい「やめ方」だったと言える。
仕事、結婚、人間関係、持ち家など、「やめたくてもやめられない」「やめるか迷っている」という方は多いのではないか。りくりゅうペアの見事な引き際から、「いい“やめどき”の見極め方」について考えてみよう。
世の中では、続けること、やり切ることが評価されがちである。もちろん、最後まで続けることは、アメリカの心理学者・アンジェラ・ダックワースが研究した「グリット」(やり抜く力)のように、成功に結びつく。理由もないのに、ただやる気がないからとやめてしまうのはもったいない。
りくりゅうペアのやめ方が見事だったのは、オリンピックの金メダルという素晴らしい成果に至る過程でやり抜く力を最大限に発揮し、そのうえで人生の次のステージに行くことを決めたことである。ここには、人間の脳の働きという視点から見て見逃せない重要な真実がある。
すなわち、やり抜く力と、やめる判断力は表裏一体だということだ。苦しくても続けるやり抜く力を支えているのは、前頭葉の働き。同様に、やめる判断を生み出すのも、前頭葉。やり抜くことも、やめることも、すぐれた前頭葉の働きがあってこそ可能になる。
前頭葉は脳の司令塔であり、目の前の課題に集中したり、周囲の状況を判断したり、行動を制御するうえで重要な役割を果たす。そんな前頭葉の最も重要な機能が、「メタ認知」だ。
ここに、メタ認知とは、自分の置かれた状況や、自分の目の前にある選択肢をあたかも外から見ているように客観視する能力である。客観視することで、自分のやるべきことも、またやめるべき状況も、見極めることができる。りくりゅうペアは前頭葉のメタ認知の働きが卓越しているのだ。
脳の働きでは、「オン」と「オフ」はお互いに関連している。例えば、それまでダラダラと遊んでいても、一気に仕事や勉強に集中する「オン」の能力が高い人は、課題を終えたらさっと離れてリラックスする「オフ」の能力も卓越している。逆に、なかなか集中できない人は、さっと切り替えてやめることもできない。「オン」と「オフ」のメリハリをつけることこそが、脳の前頭葉の最も大切な課題なのである。
オリンピックという最高の舞台で素晴らしい結果を出したりくりゅうペアの二人が、「やり抜く力」と「やめる判断」のどちらでも優れていたのは、脳の働きから見れば自然なことであり、また多くの人にとって参考になる生き方だと言うことができるだろう。
ところで、現代を特徴づける言葉の一つとして、「ピボット」が挙げられる。臨機応変に自分の認知や行動を変化させることを指す。時代の状況が急速に変化する中で、バスケットボールで軸足を中心に回転してプレーする「ピボット」のように、自分の考え方や行動を変容させることが求められているのである。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます



