中東情勢や米中対立といった、日本を直撃する地政学リスクにどう備えればいいか。評論家の白川司さんは「アメリカには地政学リスク分析を販売する専門会社がある。日本でも、情報を外部に依存するのではなく、自社内に分析・判断機能を持つ先進企業が現れ始めている」という――。
海外でのトラブルが日本の産業を止める
台湾海峡で有事が起きれば、あなたの会社のサプライチェーンはどう変わるか。ホルムズ海峡が封鎖されれば、エネルギーコストはどこまで跳ね上がるか。中国がレアアースの輸出を止めれば、自社の生産ラインはどこから詰まるか。
これらは安全保障の専門家だけが考えればよい問いではない。今や経営の最前線にいるビジネスパーソン全員が、自分の頭で答えを持たなければならない問いである。
2021年、世界の自動車メーカーが一斉に生産ラインを止めた。原因は台湾・韓国製の車載半導体の不足だった。地政学的に集中した半導体サプライチェーンが、海を越えて日本の自動車工場を止めるという現実を、多くの経営者はそのとき初めて実感した。
「地政学リスク=経営リスク」の時代
これは今後のビジネス環境を占う序章に過ぎない。
米中対立の長期化、台湾海峡リスクの高まり、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー構造の激変、中国によるレアアースの戦略的活用など、そのすべてが国際サプライチェーンに大きな悪影響を与える。
「国際問題は政府や外交官が考えることだ」というこれまでの常識は通用しない。地政学リスクはいまや経営リスクと同義である。
国際環境の変化はもはや大企業だけでなく、中小企業こそ重要な課題である。都市か地方かも関係ない。たとえ輸出入に直接関わっていなくても、取引先の一社が地政学的打撃を受ければ、その影響は連鎖的に伝播する。
そのことにいち早く気づき、素早く行動に移したのがアメリカ企業だった。

