スーパーの開店で客が9時間半も並ぶ。そんな光景が米メディアで話題になっている。先頭の客の目的は、日本のスポーツドリンク「ポカリスエット」。ドン・キホーテの親会社が展開する日本食スーパー「トーキョー・セントラル」の新店舗には2日間で1万5000人が来店した。背景には日本食ブームと「食の砂漠」と呼ばれてきた街の事情がある――。
トーキョー・セントラルの店舗外観
トーキョー・セントラルの店舗外観(写真=Mark Yasuda/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

深夜0時半から始まった大行列

カリフォルニア州サンフランシスコの街からベイブリッジを渡り、車で15分も北東に進めば、ピクサーが本社を構えるエメリービルに至る。今、この地でちょっとした異変が起きている。

時刻が深夜0時を回り、日付が1月最後の土曜日に変わった頃。同地のショッピングモール「ベイ・ストリート」の前に、折りたたみ椅子と防寒着で武装した人々の行列が伸び始めた。列はブロックを一周し、駐車場の奥にまで伸びる。

朝を迎えるにつれ周辺道路は詰めかけた人々であふれ、地元警察がドライバーに迂回を呼びかけるほどの混雑になった。米商業不動産情報サービスのコスターはその光景を、「80年代のロックコンサートのチケット売り場のようだ」と形容した。

大行列の先にあるのは、コンサート会場でもなければテーマパークでもない。日本食スーパー「トーキョー・セントラル」のグランドオープンだ。

「25年前のイケア開店に匹敵する」

一番乗りの客のライアン・リー=バーブリッジさんは前夜の0時半に現れ、椅子ひとつで夜を明かしたという。トーキョー・セントラルの広報担当者が米SF地域ニュースサイトのSFゲートに語ったところによると、初日の土曜だけで8000人超、翌日曜にも7000人が来店した。2日間で延べ1万5000人。人口1万余りのエメリービルの全住民を上回る数だ。

ベイエリア東岸のこの街にスーパーマーケットが開くのは、実に30年以上ぶりだ。米シリコンバレーの地方紙のマーキュリー・ニュース紙によると、開店2日目の日曜には入場まで約2時間待ちとなった。地元メディアはこの盛況ぶりを、「25年前のイケア開店に匹敵する」と評している。

食料品店の開業に、なぜここまでの人が押し寄せたのか。アメリカ人にとって日本食は、めずらしい食事というだけでなく、ここ数年続いているブームでもある。日本旅行の人気も高まるなか、日帰りの日本気分を楽しみたい人々から健康志向の食品を手に入れたい人まで、幅広い層が集まった。