4月27日、日経平均が史上初の6万円台に乗せた。その立役者として市場が名指ししたのは、GAFAでも半導体企業でもなく、山梨県の富士山麓に本社を置く「黄色いロボットアーム」の会社だった。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「生成AI相場の主役は米国企業だった。だがフィジカルAI相場では、日本企業が主役の一角に立てる。その理由がファナックという会社の中にある」という――。
2021年7月15日、アリゾナ州ルーク空軍基地にて作業するイノベーションズ社製の調剤ロボット「ロベルタ
2021年7月15日、アリゾナ州ルーク空軍基地にて調剤を行うFanuc LR Mate 200iD(写真=Caleb F. Butler/アメリカ合衆国空軍/PD-USGov-Military-Air Force/Wikimedia Commons

日経平均6万円台の「立役者」の正体

世界中の工場で、いまも動き続けている「黄色いロボットアーム」がある。

自動車工場で車体を溶接する黄色いアーム、電子部品工場で部品を組み立てる黄色いアーム、食品工場でパッケージを箱詰めする黄色いアーム――。テレビのニュース映像、企業のPR動画、街の自動車CMの背景。私たちは知らずしらずのうちに、この黄色いロボットアームを何度も目にしている。

世界に出荷された累計台数は、2023年8月に100万台を突破した。初号機の量産開始から46年での大台到達である。製造しているのは、日本の山梨県、富士山麓に本社を置く1つの企業――ファナックである。

2026年4月27日、日本の株式市場で歴史的な瞬間が訪れた。日経平均株価が、史上初めて終値で6万円台に乗せたのである。何が相場を押し上げたのか。日本経済新聞の見出しが端的に伝えている――「日経平均、終値初の6万円台 ファナック急伸・フィジカルAI相場号砲」。

世間ではあまりなじみのない、知る人ぞ知る日本企業。しかしその「黄色いロボットアーム」が、いまフィジカルAI時代における日本企業の切り札の一つとして、市場に再認識され始めている。

なぜか。本稿では、書籍『フィジカルAIの衝撃 「身体をもった人工知能」は2030年の世界をどう変えるか』(朝日新聞出版)で私がファナックを「暴走しないAIを世界標準にする統治者」として位置づけた理由と、書籍入稿後に同社が打った具体的な手を、最新の事実とともに読み解いていきたい。

「黄色と緑が示す設計思想」ファナックとは何者か

まず、ファナックという企業のイメージを、もう一段深めておきたい。

田中道昭『フィジカルAIの衝撃』(朝日新聞出版)
田中道昭『フィジカルAIの衝撃』(朝日新聞出版)

ファナックは、世界4大産業用ロボットメーカー(ファナック、安川電機、ABB(スイス)、KUKA(ドイツ))の中で売上首位。世界シェアは約2割で世界首位。工作機械用CNC(コンピューター数値制御)装置では世界シェア約50%、国内シェア約70%。

特に米国市場で圧倒的に強い。売上の約39%が米州地域から。1982年にGM(ゼネラルモーターズ)との共同出資で設立された「GMファナックロボティックス社」が原点で、米国の自動車工場の溶接ラインを黄色いロボットアームで埋め尽くしてきた。

興味深い歴史がある。ファナックは、産業用ロボットの量産を1977年に開始してから40年後の2017年に、累計出荷台数50万台を達成した。その後わずか6年で、もう50万台を上乗せし、2023年8月に累計100万台に到達している。「初の40年で50万台」と「次の6年で50万台」――同社の出荷ペースが、近年いかに加速しているかが、この数字に表れている。