家事をしてくれるロボットはいつ来るのか。2026年、その答えはすでに出始めている。ノルウェー発のヒューマノイド「NEO」が米国家庭への出荷を開始し、「ヒューマノイド商用化元年」と呼ばれる時代が幕を開けた。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「家庭こそフィジカルAIの最後の、最も難しい現場だ。だがロボットが家事を担うことで、人間は現代で失ったものを取り戻すことができる」という――。
ランドリーで洗濯物を折りたたむロボット
写真=iStock.com/onurdongel
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「月7.6万円」家事ロボットがついに誕生

「家事をしてくれるロボットがあったら、どんなにいいだろう」――共働き世帯、子育て世帯、介護を担う世帯、一人暮らしの高齢者世帯。日本で家事の負担を感じない人は、もはやほとんどいない。

2026年5月、私が出版した『フィジカルAIの衝撃』(朝日新聞出版)に寄せられる読者からの質問で、もっとも多いのがこれだ。

「で、家事をしてくれるロボットは、いつ家に来るんですか?」

答えから言おう。もう、米国の家庭には来ている。

ノルウェー発のロボティクス企業1X Technologiesが開発した家庭用ヒューマノイド「NEO」は、2026年第3四半期から米国・カナダ向けに優先出荷が始まる。価格は2万ドル(約300万円)の買い切り、または月額499ドル(約7.6万円)のサブスクリプション。身長167.6センチメートル、体重29.9キログラム、高密度ポリエステルとソフトな3Dラティスポリマー外装で覆われた、人間への接触安全性を最優先した「ソフトヒューマノイド」である。騒音は22デシベル――家庭用冷蔵庫と同等以下の静音性を実現している。

しかも、2026年は「ヒューマノイドの商用化元年」と呼ばれている。Figure AIの「Figure 03」は2026年後半に限定パートナーへ配備が始まり、テスラの「Optimus」は2027年末の消費者向け販売を目標としている。CES 2026では、中国・深圳に本社を置くスマートホーム企業SwitchBotが車輪駆動型の家庭用ヒューマノイド「onero H1」(目標価格9999ドル)を発表した。

そして、読者の皆様の真の関心はこうだろう。「で、日本の家には、いつ?」「自分の家に来るのは何から?」「それでも残る、人間の仕事は何か?」

本稿では、本書で示した構造に基づいて、この3つの問いに正面から答えたい。

なんと「人間の遠隔操作」という事実

しかし、ここで多くの読者が知らない衝撃的な事実を提示したい。

2026年に出荷される1X「NEO」には、「Expert Mode(エキスパートモード)」という機能が実装されている。NEOが家庭内でタスク処理に詰まると、即座にシステムのSOS信号がクラウドを介して1X社のコントロールセンターへ送信される。すると、VRゴーグルを装着した人間の「プロの遠隔オペレーター」が、自宅の中をカメラ越しに見渡しながら、機体を遠隔操作して家事を完了させるのだ。

田中道昭『フィジカルAIの衝撃』(朝日新聞出版)
田中道昭『フィジカルAIの衝撃』(朝日新聞出版)

つまり、2万ドルを支払って「NEO」を家に置いた消費者は、実は「高価な遠隔操作アバター」を購入している側面がある。そして、この介入操作ログは、AIモデルの精度を高める「教師データ」として1X社へ還流され、次の自律動作アップデートに反映される。

これは、初期市場特有の構造的歪みである。消費者が多額の機体費用(2万ドル)と高額な月額費用(499ドル)を支払いながら、同時に実空間における「ロボット教育用のデータラベラー」としての役割を無自覚に引き受けている――という構造だ。

2026年時点における自律的な家事実行精度は、良好な実験環境下であっても30%から50%程度に留まると評価されている。本書で繰り返し論じたように、フィジカルAIは「現実世界の制約を前提とした総合産業」であり、家庭こそが最も難しい現場なのだ。