そもそも「人型」でなければならないのか?

ここで、もう一つの疑問が浮かぶはずだ。「なぜ、家庭用ロボットは『人型』なのか?」と。

ルンバのような円盤形でも、ロボットアームだけでも、十分に家事はできるはずだ。なぜ、わざわざ2本足で歩く人型を作るのか?

本書で私は、「なぜヒューマノイドは人型でなければならないか」を一章を割いて論じた。答えは、フィジカルAIの根本構造にある。

家の中の道具は、すべて人間の身体寸法を前提に設計されている。

ドアノブの高さ、階段の段差、洗濯機の扉、食器棚の引き出し、冷蔵庫の取手――これらはすべて、人間が使うことを想定して作られている。だから、人型ロボットだけが、家のインフラを一切変更せずに、そのまま家事ができる。

これが、テスラOptimus、Figure 03、1X NEO――世界のヒューマノイド開発企業が、揃って「人型」を選んだ理由である。「強い」「速い」「賢い」ロボットを作るためではない。家のインフラに、人間の代わりに入れる形を作るためだ。

私は本書で、これを「CapExゼロのシステム互換性」と呼んだ。家庭側の物理環境を変えずに、ロボットの方が家に合わせる――これが、家庭フィジカルAIの設計思想である。

家庭用ロボット
写真=iStock.com/peepo
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ただし、SwitchBot onero H1のように、あえて2足歩行を排除し「車輪駆動ベース」を選択する設計思想も登場している。家事の自動化を最も効率的かつ安価に実現するための現実主義的なアプローチであり、2足歩行の高コスト・安全リスクを回避しながら、家庭に入る「現実解」として注目されている。

洗濯、ゴミ出し…最初に置き換わる「5つの家事」

では、フィジカルAIが日本の家庭に入るとき、最初に置き換わるのは何か。本書で論じた「大地・OS・身体」の三層構造に基づいて、5つの仕事を予測したい。

第1に、洗濯物運搬。

洗濯機から乾燥機への移動、乾燥後の取り出し、各部屋への運搬――これらは「動かす」だけで完結し、繊細な「触れる」判断がほとんど必要ない。本書の身体層分解で言えば、「動かす(筋肉)」だけで成立する仕事である。だから、最初に来る。

第2に、ゴミ出し。

ゴミ袋を持って玄関を出る、所定の収集場所に置く――これも完全閉鎖された容器の移動なので、対象物の状態判断が不要だ。認識の負荷が低い。だから2番目に来る。

第3に、買い物搬送。

スーパーから家まで荷物を運ぶ、冷蔵庫に入れる――これも「動かす」が中心である。商品の判別は事前に学習可能、運搬経路も日常的に固定されている。

第4に、食器下げ。

食事後の食器を下げる、流しに運ぶ――これは段階的な「精密化」が必要だが、食器という形状の限定された対象なので比較的早い段階で実装される。

第5に、見守り。

高齢の親や子供の安全を、カメラとセンサーで監視する――これは直接接触が不要で、本書の「見る(五感)」層だけで完結する。だから接触リスクがゼロで、医療・介護ロボットの蓄積を直接転用できる。