トーキョー・セントラルが入居するモールの「ベイ・ストリート」も、空室率が30%に達し、寂しさが否めない状況だった。2021年、不動産開発会社センターカル・プロパティーズがこれを9050万ドル(約141億円)で取得し、さらに7000万ドル(約110億円)を投じて大改修に着手。飲食店を中心にテナントを次々と呼び込み、がらんとしていたモールは一変。ほぼ空きテナントがない娯楽型商業施設に生まれ変わった。

それでも、肝心の食料品店だけが埋まらなかった。集客の核に据えるはずだったアマゾンの生鮮スーパー「アマゾン・フレッシュ」が出店計画を白紙撤回したと、地元ニュースサイトの米地域市民ニュースサイトのジ・イーヴィル・アイ・ニュースは伝えている。

撤退したニュー・シーズンズの二の舞になるのではないかと不安が広がるなか、約9カ月後に名乗りを上げたのがトーキョー・セントラルだった。アマゾン・フレッシュはその後、全米の実店舗をすべて閉鎖しオンライン配送に一本化すると発表している。仮にエメリービルに出店していたとしても、遅かれ早かれ店は閉店していただろう。

ベイエリア全域でアジア系の出店ラッシュ

ベイエリアでは今、アジア系食品店の旋風が巻き起こっている。

サンフランシスコ・クロニクルが報じるように、昨年3月、デイリーシティで韓国系スーパー「ジャガルチ(Jagalchi)」がグランドオープンを迎えると、数百人が詰めかけた。

日系の「オーサカ・マーケットプレイス(Osaka Marketplace)」がフォスターシティに新店舗を構えたほか、カナダ最大のアジア系チェーン「T&Tスーパーマーケット(T&T Supermarket)」もミルブレーへの出店準備を進めている。

アメリカ最大のアジア系食料品チェーン「Hマート(H Mart)」はダブリンと州内フリーモントへの出店を計画しており、フリーモント店は同チェーン史上最大の規模になる見込みだ。

その受け皿になっているのが、デパートや量販店が撤退した跡地だ。パンデミック以降、アジア系スーパーはショッピングセンターの新たな集客の核として求められるようになったとコスターは分析する。

ジャガルチが入居したのも、大手百貨店JCペニーの跡地だ。位置情報分析会社Placer.aiのデータによれば、開業後の客足は大きく伸びた。フィリピン系「シーフードシティ」は生DJやカラオケ付きの深夜イベント「レイトナイト・マッドネス」を定期開催し、フィリピン文化の発信拠点にもなっている。

東パロアルトに開業した韓国系「メガマート」にいたっては、ジャガルチのエグゼクティブシェフで韓国初のミシュラン星付きシェフのトニー・ユー氏が手がけるレストランまで併設している。ベイエリア各地で、空いたモールにアジア系スーパーが新たな活気を吹き込んでいる。