ドイツ首相「脱原発は失敗だった」

イラン発のエネルギーショックを受けて、日本では原発再稼働に向けた機運が高まっている。この動きは欧州連合(EU)も同様だが、一つだけ乗り遅れている国がある。それは、2023年4月に脱原発を完了したドイツだ。国内では原発の再稼働を望む世論が過半を占めているが、フリードリヒ・メルツ首相は消極的な姿勢を貫いている。

2026年4月16日、連邦議会に出席するベルリン:フリードリヒ・メルツ連邦首相(キリスト教民主同盟)
写真=dpa/時事通信フォト
2026年4月16日、連邦議会に出席するベルリン:フリードリヒ・メルツ連邦首相(キリスト教民主同盟)

メルツ首相が属するキリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)の中では、原発の再稼働に向けた機運が高まっている。シュピーゲル誌によると、CDUとCSUの同盟(Union)のイェンス・シュパーン院内総務は、原発の再稼働を強調する旨を、4月15日に開催された党内での会議で述べたという。

いわゆる次世代原発の新設を目指す動きもある。CSU党首であるバイエルン州のマルクス・ゼーダー知事は、同州内で小型モジュール炉(SMR)を稼働させる意向を以前より示している。とはいえSMRの新設には時間がかかるし、そもそもSMR自体が開発の段階にあり、本格的な稼働まで至っていないという、厳しい現実がある。

そうなると、稼働を停止した原発を再稼働することが現実的な手段となる。にもかかわらず、メルツ首相は消極的な姿勢を崩さない。一方、メルツ首相は事あるごとに、脱原発は失敗だったと公言する“矛盾”がある。メルツ首相としても、それが取り得る選択であるなら取りたいというのが本音だろう。しかし、それを許さぬ現実がある。

脱原発を完了したことで、稼働を停止したドイツの原発は、すでに廃炉・解体のプロセスに入っている。原発を運営してきた電力会社も、脱原発を見越して運営体制を縮小してきた。ドイツのエネルギー政策において脱原発は、すでに帰還不能点(point of no return)を超えており、原発の再稼働という手段は容易に取り得ないのは確かだ。