政治決断を阻む“政治ゲーム”

とはいえ、メルツ首相はそもそも脱原発の見直しに積極的だったし、国民の世論を背景に、自らが属するUnionも原発の再稼働について前向きな姿勢を強めている。実際、原発の再稼働は、限定的であればそれも可能だろう。政治決断さえ下せれば何とかなりそうなものだが、それを下すことができないメルツ首相の苦悩があるようだ。

その苦悩の一つに、国内の政治情勢があると考えられる。要するに、右派政党であるドイツのための選択肢(AfD)との付き合い方だ。それは同時に、連立を組む中道左派の社会民主党(SPD)との付き合い方でもある。戦後来、ドイツ政治には戦前のナチス時代を否定するという不文律がある。ナチスを肯定することは許されない。

一方、AfDは、その排外主義的な主張や、一部の過激な政治家による発言により、ナチスあるいはネオナチ的な存在とみなされている。少なくとも、ドイツの主要政党の全てがAfDを危険な存在だと認識し、同党との連立を拒絶している。とはいえ、ドイツの世論調査では、旧東ドイツを中心に、AfDへの支持率は非常に高いものがある。