患者にとって本当に必要な治療は何か。大阪けいさつ病院の竹政伊知朗さんと大森健さんは、大腸と胃のロボット手術分野において、日本を代表する二人の名手だ。同じ消化器を専門としながら、性格、歩みは全く違う。しかし患者に対する治療への思いには共通点がある――。

※本稿は、大阪けいさつ病院広報誌『OIM∞』の一部を再編集したものです。

病院で高精度のナノ手術を行うロボットアーム
写真=iStock.com/gorodenkoff
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反骨精神と医学部入学

竹政伊知朗を端的に表現するならば、反骨精神、人に恵まれながら道を切り拓いてきた男、だろうか。

竹政は1965年に広島県で生まれた。外科医だった父親の開業に合わせて大阪に移っている。高校からは横浜市にある桐蔭学園に進んだ。横浜に特に縁はなく、親許を離れて自分でいろいろやってみたかったと笑う。桐蔭学園は学力に合わせてクラス分けがされていた。

竹政のクラスは50人のうち半分が東京大学、残りは医学部という具合だった。そこで竹政の反骨精神がもたげる。「なんでみんな東大、東大って言うのって。それが嫌でわざと受験しなかったんですよ」とうそぶく。

竹政が興味を持ったのは音楽と建築だった。高校卒業後は、友人の家に居候して渋谷にあるジャズクラブで働いた。2年ほど経ったころ、脳外科医だったその友人の父親に諭されて、大阪に戻ることになった。

帰宅してみると、受験をしなかったことを両親が咎めることはなかった。文句を言われれば東京に戻ろうと竹政は身構えていたという。両親の懐の深さに感じ入り、受験勉強に戻り、大阪医科大学に入学。

ただし、この時点では将来への展望はなかった。世界各地の建築を見て回り、バックパッカーとしてアフリカを一カ月かけて旅したこともあった。「成績は留年しないぐらいでぎりぎり。真面目な学生ではありませんでした」と頭を掻く。

大阪けいさつ病院 特別顧問/院長補佐 竹政伊知朗さん
大阪けいさつ病院 特別顧問/院長補佐 竹政伊知朗さん