大切なのはみなができる術式を広めること

前述のように単孔式は細かな手技が必要となる。大森はこの技術を磨くことに専念した。先人のいない世界を切り拓こうとした動機は、竹政と同じだ。穴、つまり「傷」は少ないほうが患者の身体への負担が少ないからだ。

しかし――。

「2014年頃、学会で単孔式の新しい術式を発表しても、これは無理、できませんみたいな雰囲気になっていました。一つの傷ではできないから、二つぐらい足したり。一つの傷でやるのではなく、減らせばいいという流れでした」

わざわざ難しい技術を覚える必要はない、大切なのはみなができる術式を広めることだという、“均てん化”の流れである。

病院で手術を行う医療チーム
写真=iStock.com/ronnachaipark
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竹政と会ったのはそんな時期だった。

「一緒の医局なので面識はありました。しかし、深く関わることはなかった。ある会で、ぼくが胃、竹政先生が大腸でコラボしたんです。手術が上手くて、ぼくと同じことを考えている先生がいるんだと思いました」

胃がんと大腸がん、二人の名手が揃う

大森は単孔式の腹腔鏡手術とロボット手術には共通点があるという。

「使える手が4本。そのため手術の展開が似ているので、ロボット手術で使っているような曲がる鉗子を腹腔鏡手術で試してみたこともありました」

鉗子は自分で工夫して作りました、いつでもロボットに対応できるような体制をとっていたんですと微笑む。

2014年、大森のいた大阪警察病院にダビンチが導入された。

「当時は使える鉗子が限られていたこともあって、最初の印象はやりにくいな、というものでした。これまで1個の傷でやっていたのに、4つも傷をつけるというのもどうかと感じていました。最初の1、2例は苦労しましたが、3例目から快適になった。当時ではびっくりするような短時間で手術を終えることができた」

ラーニングカーブ(学習曲線)が腹腔鏡手術よりも上がりやすい。これからはロボット手術だなと確信したという。

その後、大森は大阪府立成人病センター、大阪国際がんセンターを経て、2024年4月に大阪警察病院に戻ってき警察病院行きは希望だったんですかと尋ねると、ぼくは医局に言われたままに動いているだけですと冗談っぽく笑った。

その約半年後、札幌医科大学の教授になっていた竹政が合流した。警察病院に胃がんと大腸がん、二人の名手が揃ったことになる。